短編小説
□とある画家の話
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一人の画家がいた。
彼は立てかけた真っ白なキャンバスを見た。
彼の背の高さを超す2メートルぐらいある大きなキャンバス。
周りにはでたらめに色を重ねた絵が転がっていた。
いや、これは絵と呼べるのかすらあやしいぐらいに色を重ねすぎてどす黒くなってしまったキャンバスの亡骸だった。
誰もいない部屋で画家は一人語り始める。
「私は…私は本当の自分の絵を描きたいんだ。
周りの期待にこたえるような絵を描くのはもううんざりなんだ…。
素晴らしいといわれる作品に私は一度たりとも納得したことなんてない。
私の絵を…私自身を……このキャンバスに…。」