寄書

□【甘く融かす】
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【甘く融かす】


緩やかな苦しみと暖かい感触。
あぁ…、僕殺される?
でも嫌じゃない。

「ねぇ、私の事好き?」


何度聞いただろう。
何度頷いただろう。
そして今日も頷いた。

「嘘つき」


離される腕。
流れ込む冷たい空気。
圧迫から解放された喉は痛みを感じながら咳き込む。


「そうだよ、僕は君に本当の事なんか言わない」
「…嘘つき」
「そうだね」

揺らぐ紫煙。
揺らぐ気持ち。
それは有ってはならない事。
有り得ない事。


「ねぇ、名前は?」
「さぁね」
「教えてよ、ケチ」
「そうだね」



彼女と居たいんだ。
人間なのに。


「悪魔」
「違うよ」
「嘘つき」
「そうだね」



融かそう。
分からなくなるまで。
一緒になって。
甘いキス。それは契約。

脳内は崩壊寸前。
翼はとっくに朽ちてる。
契約なんか役に立たない。
分かってる。


それでも一緒に居たいんだ。



「ねぇ、首締めて良い?」
「嫌だね」
「嘘つき」





end...

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