死神帳

□【削除】
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その瞬間、少女は暗闇に包まれた。
暗闇の中で少女が見る事が出来るのは自らと、ほぼ闇と同化している男の姿だけになった。
辛うじて蒼白い顔が見える。

「今からお前は『この世界』から消える……。何か言い残す事はあるか?」



「消えたくない…」


少女はそれは小さな小さな声で、呟いた。セリは無表情に少女を見下ろしている。
しかし、どことなく憂いを帯びている様な雰囲気だ。



「消えたくない……!!消えたくないよぉ!!


「………時間だ」それは死刑執行の言葉。
少女はこの世界から『消える』
それは意味通り
『存在さえ消えて無くなる』


「いやっ……いや!!おばあちゃん助けてっ!!」


少女の体は既に透き通って暗闇と区別がつけられなくなっていた。
それでも尚暴れている。


「次は幸せにな」



セリがそう呟くと少女は跡形も無く消え去った。
遂に悲鳴の木霊すらも聞こえない完璧な暗闇になり、先程まで少女の居た場所にセリは静かに十字を切った。
暗闇に光が差しそこは元の通りになった。
しかし、そこには少女の死体は落ちていない。『消える』と言うのはこう言う事だ。
姿は勿論、人々から存在の記憶すら消えてしまう。
消された者は

『最初から存在していなかった事』になる。





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