始まり終わりの7題

□抱きしめたい/抱きしめてほしい
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躊躇っていた時間は長かったのに、あっという間だ。
三橋はあまりのあっけなさに呆然としながら、それらをゴミ袋に放り込む。
三橋がこだわり続けたそれらは、ゴミ袋1杯分の量にもならなかった。

これからどうしたらいいんだろう?
学校を休んで、三橋はずっと考えていた。
今まではつらくても、投げていればそれでよかった。
悪口を言われても、仲間の輪に入れなくても。
ボールを投げてさえいれば、どんなことでも我慢できた。

だが今はその野球が出来ない。
ボールを投げようとするだけで呼吸が苦しくなる。
唯一の救いである野球が出来なくなってしまった。

何よりもつらいのは、今の野球部の部員たちだった。
彼らは三橋のことをすごく心配してくれている。
10人しかいない野球部で、ただ1人の投手だからとはわかっている。
だがやはり申し訳なかった。
彼らの親切に三橋が返せるのは、野球しかないのに。
今の三橋はその野球さえも出来ないのだから。

やはり自分が野球をすると、みんなが不幸になる。
心配してくれる西浦の部員たち、後悔している三星の部員たち。
わざわざ三星に戻れと言ってくれた祖父、つらそうにしている両親。
そしてバッテリーだからと、三橋に献身的につくしてくれる阿部。

もう自分のせいで、周りを振り回すのは嫌だ。
三橋は今度こそきっぱり、野球をやめようと決意した。
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