ヒルセナ10題

□勝利を目指す
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つらい。きつい。
セナは荒い呼吸を整えながら、ふらつく足に力を入れた。
アメフトとラグビーの違いって防具があるかどうかくらいしか知らなかった。
他の種目の助っ人よりは入りやすいと思っていたのに。

まずタックルを受けても、プレーが止まらない。
1プレイごとに集中して、そこで一気に全力を出し切ることが身体に染み付いているセナには慣れない感覚だ。
端的に言えば、アメフトは短距離走であり、ラグビーは長距離走のようなもの。
セナは明らかに短距離のペースで長距離を走ってしまっていた。

パスがないというのもきつい。ラグビーでは反則なのだ。
デビルバッツではセナがバテ気味になれば、ヒル魔はパスに作戦を切り換えて休ませてくれた。
だがラグビー部員たちはクリスマスボウルのヒーローを過大評価しているようで、どんどんセナにボウルを回す。

擦り傷もかなり増えた。
防具がないタックルはアメフトほど当たりは強くないが、表面に受ける傷は多い。
それに普段防具に守られている身体に生身で受けるタックルはセナを戸惑わせる。

身体はもう無理!と叫んでいる。
それでも。セナはちらりとスタンドを見た。
視線の先にいるのは悪魔のQBと巨体のラインマン。
脳裏に浮かぶのは春大会の王城戦だ。
まだ3人だけで正部員だけでは試合も儘ならなかったアメフト部。
天才ラインバッカーと勝負できたのは、助っ人たちのおかげだ。

だから逃げない。負けられない。
セナはまっすぐにゴールポストを見据えて、また走り出した。
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