ヒルセナ10題

□勝利を目指す
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試合は予想通り、泥門の大敗だった。
泥門の得点はセナの3トライだけ。相手はその数倍も点を取っている。
それでもそもそも泥門がかなう相手ではない。
相手の本気を引っ張り出して、点を取り、この点差ですんだのは奇跡だ。
試合後のフィールドでは。
泥門だけでなく相手校の選手たちまでがセナに握手を求めていた。
デビルバッツの面々は自分たちのエースの走りに心を熱くした。

あの春の試合のとき、私はアイシールドくんがセナだなんて思いもしなかった。
まもりがポツリと呟いた。
そうか、あのとき姉崎さんは知らなかったんだよね、と栗田が答える。
まもりもまたこの試合で春の王城戦を思い起こしていたようだ。

ヒル魔は相手校に挨拶をして、引き上げてくるセナを見ていた。
アメフトの試合では、セナの目はアイシールドの向こうにある。
だけどヘッドギアだけのラグビーで、初めてじっくりと見た。
勝利を目指すセナの、ひたむきで綺麗でまっすぐな目を。

アイシールドなんかつけさせたのは失敗だったか?
ヒル魔はそう考えてすぐに思い直した。
あんな目をそう簡単に他のヤツらに見せなくて正解だ。

セナがこちらに向かって手を振っている。
今日は勝利を目指す小さなヒーローを大いに労ってやろう。
ヒル魔はいつになく優しい目で、照れくさそうに笑うセナをずっと見守っていた。

【END】
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