ヒルセナ10題

□21番の重さ
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「ああ!セナ先輩!」
そこへキャプテンが飛んできた。
「ドリンク配りなんて誰がさせたんですか!」
「いや、僕が勝手にしたことだから。せっかく来たんだから少しは役に立たないと。」
いつもはおっかないキャプテンがその人−セナ先輩にペコペコと頭を下げている。
「今度時間があるときにまた来るから、一緒に練習しようね。」
セナ先輩が手を振りながら、残りのドリンクを配り始めた。

「あの人、誰なんですか?」
僕はキャプテンに聞いてみた。
「初代RBの小早川セナ先輩。アイシールド21だよ。」
「えええ〜〜〜〜!」
僕は驚き、思わず大声を出してしまう。
ニコニコ笑いながら120人分のドリンクを配りつづけるあの人が、アイシールド21?

小さな身体を補って余りある、光速の足を持つ天才。
きっと僕なんかとは全然違う才能の持ち主だろうと思ってた。でも。
運動靴で逆走するドジな人で、他の運動部を回って助っ人を頼むひたむきな人。
主務になれない不器用な人で、ドリンクを配る地味な仕事を笑って引き受ける優しい人。
何よりも僕にアメフトに導いてくれた。僕の大事な目標となる人だ。

時間があるときにまた来てくれるって言ってたっけ。
そのときまでにはできればレギュラー入りしていたい。
もっともっと実力をつけて、いつか21番をつけるんだ。
僕は1人1人に声をかけながらドリンクを配り続けるその人の後姿を目で追いかけ続けた。

【END】
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