ヒルセナ5題2

□見つめる背中
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雪光学はゆっくりと目を醒ました。
枕もとの目覚まし時計はいつもの時間を差している。
ベットの上で大きく一つ伸びをすると、雪光は身体を起こした。
そしていい夢だったなぁ、とひとりごちる。

今日は大学受験の合格発表の日だった。
やれるだけのことはやった。後は結果を見るだけ。
そんな朝に見た夢は約1年前のあの日の夢だった。

全日本代表として、渡米するメンバーたちを雪光は空港まで見送りに行った。
セナもヒル魔も栗田もムサシも、代表メンバー入りしていた。
十文字たちはトライアウトを受けて、また別便で渡米するらしい。
マネージャーのまもりやチアの鈴音まで同行する。
雪光だけがここで道を分かつことになった。

クリスマスボウルに出場して、タッチダウンも決めた。
それだけでも雪光にとってはすごいことだった。
それなのにここで自分だけ道を外れることがこんなにも寂しいなんて。

空港に見送りに行くかどうか、迷った。
行けば寂しさが強くなって、よけいつらいかもしれない。
だがセナの笑顔を見て、そんな気持ちは吹き飛んだ。
セナは見送りに来た雪光にとても喜び、感謝してくれた。
雪光を今も仲間と思ってくれているのだ。

これが最後の別れじゃない。またどこかで必ず出会う。
そう思いながら、搭乗口に消えていくセナの背中を見つめていた。
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