ヒルセナ5題2

□見つめる背中
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雪光は合格発表を見に行くために電車に揺られていた。
シートに座り、車内の様子をぼんやりと眺めている。
ふと前の座席に座る一組の親子が目に留まった。
母親に抱きかかえられている赤いTシャツの小さな子供。
雪光はその小さな背中を、夢に現れた少年と重ね合わせていた。

思い返せば、いつもセナくんの背中を見つめていたなぁ。
雪光は少年と出会ってからの高校生活に思いを馳せる。
最初はアメフト部の試合を観戦したときだった。
これが光速の走。エンドゾーンに向かって見る間に小さくなっていく21番。
アイシールド21の走りに憧れ、心奪われた。
運動経験もなく、しかも2年生なのに、入部テストを受けに行った。
どうせつまらないものと思っていた高校生活をガラリと変えたあの背中。

その次の強烈な思い出はデスマーチだ。
もう走れない。置いていかれると思ったとき、担いでくれた。
小さな背中はとても暖かかった。
1人で走れるからと告げたとき、心配そうに遠ざかっていったあの背中。
なかなかポジションを貰えず、悔しかった日々の支えになった。

最後に空港で見た別れの背中を支えに1人で違う道を進んできた。
そして今日、その結果が出る。
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