夏鈴5題

□バカじゃないの
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やだ、セナ!その匂い、何よ?
鈴音が顔を顰めたのを見て、セナは「やっぱり?」と首をがっくりと項垂れた。

「月刊アメフト」の取材翌日。
放課後、例によって泥門高校に現れた鈴音は、用意していた質問を変えた。
本当はまず「取材、どうだった?」と聞くつもりだったのだ。
だが現れたセナは、いつもとは違う香りを漂わせていた。

昨日、鈴音は全員が着替え終わった後の部室で「バカ兄貴」を蹴り飛ばしていた。
鈴音が愛用しているバラの香りのオーデコロン。
それが部室内で濃く香っていたからだ。
その後モン太ら他の部員の証言で、夏彦が鈴音のコロンをセナに振りかけたことを聞いた。

鈴音は怒りながらも、ひそかに兄に感謝し、事の成り行きを面白く思っていた。
これからセナはヒル魔に会うのだ。
ヒル魔は当然、セナから香る鈴音のコロンに気がつくはずだ。
さてヒル魔は、どんなリアクションをするのだろうと。

答えは今、セナから香るこのミントの香り。
名前は知らないが、これはヒル魔が愛用している香りだ。
セナは鈴音のバラの香りを洗い落とされて、ヒル魔のミントの香りを付けている。
多分、セナはヒル魔の家に泊まったのだろう。
そしてセナに自分の香りを付けさせた。
それを鈴音に伝えるために、ミントの香りを消す猶予をセナに与えなかったのだ。
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