年下5題

□可愛いエガオ
2ページ/7ページ

中坊がようやくカジノテーブルの掃除を終えたときには、ほかの部員は全員割り当ての掃除を終えていた。
あとはセナたち2年生が、自分たちのロッカーを片付けているだけだ。
引退する彼らは、自分たちの私物を引き取り、来年入部する部員たちの為にロッカーを明け渡すのだ。

昨年までは1階にあったロッカールームは、今は地下にある。
今年になって部員が増えたので、1階では入りきれなくなったのだ。
だから昨年はヒル魔の武器倉庫であった地下が、武蔵工務店の手によって改装された。
中坊は大急ぎで、地下へ続く階段を駆け下りた。
まだ間に合うといいけど、と心の中で祈るように念じながら。

どうしたの?
あまりの勢いで駆け下りてきた中坊を、セナは不思議そうに見ていた。
他の2年生たちはもう片づけを終えてしまったらしく、誰もいなかった。
だがセナのロッカーは扉が開いていて、もう中には何も入っていない。
どうやら遅かったらしい。
中坊は何でもいいから、何かセナの私物を譲り受けたかったのだ。
すでにハイエナ−同じ目的の他の1年生によって持っていかれた後だった。

そもそもアメフト部員は、案外私物が少なかったりする。
ジャージやヘルメットやパッドなどの類は、個人ではなく部の所有物なのだ。
だからセナの持ち物をもらうのは、すごく競争率が高いことなのだ。

ああ、カジノテーブルなんかの掃除に当たってしまったばかりに。
中坊はがっくりと肩を落とした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ