ヒルセナ5題

□赤と黒
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泡の中でゴシゴシと擦ると、筋肉痛の身体が悲鳴をあげた。
それでも腕を動かし続ける。
赤い布地と黒い背番号が手の中で擦られて。
泡の中から浮かび上がっては、また泡の中に消えていく。

関東大会準決勝の王城戦の翌日。
セナたちはユニフォームの洗濯をしていた。
私が洗っとくからいいのに、とまもりが笑う。
自分でやりたいんだ、とセナが答えた。
そして汚れたユニフォームの泥が落とされて綺麗な赤と黒が現れる。

洗濯を終えてすべてのユニフォームが並んだ。
セナはプレー開始の時、一番後ろにいることがほとんどだ。
だから身長が低いセナの視界は概ねユニフォームの赤と背番号の黒。
いつも皆の背中を飾る赤と黒を頼もしく思っている。
この赤と黒の盾に守られて、セナは走っていくことができるのだ。
セナは干されたユニフォームの列を見ながら、ふと思いを馳せる。
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