理性と本能8題

□剥がれ落ちた理性
1ページ/6ページ

小早川瀬那は指定されたホテルのロビーで待っていた。
こちらは相手の顔を知らないが、向こうは知っているという。
だから声をかけられるまで、ここで待っていればいい。

15歳、高校1年生の瀬那は小柄で童顔で可愛らしい容姿をしている。
ロビーでちょこんと座っている彼を見ても誰も気がつかないだろう。
彼が男に抱かれることを仕事としており、客を待っていることなど。

じっとエントランスを見ていた瀬那は、ちょうど入ってきた1人の男に目を奪われた。
上等な仕立てのスーツに身を包んだ長身の若い青年。
顔立ちは恐ろしいほど整っており、その体躯も立ち居振る舞いも優美だ。
そして逆立てた金髪と、尖った耳に2連のピアス。インパクトのある容姿。
瀬那はその青年に見とれた。

なんて綺麗な人なんだろう。この人だったらいいな。
初めての相手がこんなに綺麗な人とだったら。
そう思うとドキドキしてしまう。
でも青年は瀬那の前を素通りして、エレベーターホールへと歩き去ってしまった。
瀬那は大きくため息をついて、肩を落とした。

瀬那は再びエントランスに目を向けながら、身構えた。
金のために身体を売る。でも心だけは強くありたい。
その時、瀬那は懸命にそう思おうとしていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ