理性と本能8題

□自殺理性
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どこで道を間違えてしまったんだろう?
そしてこの先、どうすればいいんだろう?
瀬那は未だに意識が戻らない母親の傍らで、ずっと考え続けている。

先代の姉崎会長の実子がまもりではなく、瀬那であると公表された。
その日から瀬那は蛭魔家には帰らずに、母の美生の病室に寝泊りしている。
この病院は完全看護体制であり、泊り込みの付き添いは禁止されている。
だが瀬那の不安定な気持ちを察した蛭魔が、病院に話を通してくれたという。
そして瀬那の気持ちが落ち着くまでそっとしておくようにと、父親に頼んだのだと聞いた。

瀬那だってよくわかっている。
こうやって現実から目を背けて、引きこもりのようなことを続けているのはよくない。
決断して、直面している事態に立ち向かわなくてはいけないのだ。
それでも瀬那は、まるで救いを求めるように美生の横から離れられないでいた。

それにもう1つ、瀬那には気になっていることがあった。
自分の出生の秘密を聞かされたとき、蛭魔もあらかじめ知っていたのだと思った。
だから蛭魔に責めるような言葉を、投げつけてしまったのだ。
だがその後、武蔵から蛭魔もあの時初めて知ったのだと聞いた。
武蔵は蛭魔の父に言われて、蛭魔にはずっと隠していたのだと言った。

傷つけてしまった。まもりも、姉崎夫人も、蛭魔も。
それに美生の意識が戻って、瀬那が身体を売ったことや皆を傷つけたことを知ったら、きっと悲しむ。
そう思うと瀬那の心はますます沈むのだ。
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