高桜5題

□ドキドキする
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「それじゃ、ライスボウル勝利を祝して!」
「乾杯〜!」
祝勝会会場に集う面々が、掛け声と共にグラスを掲げる。
ガチャガチャとグラスがぶつかり、次に全員の喉がゴクゴクと鳴った。

ヒル魔が最京大学を中退して、渡米してから1年が経った。
すぐにNFLのチームに入ることはは叶わなかったが、アメフトの名門大学に転入している。
今やアメリカではすっかり有名人だ。

日本に残ったセナは、炎馬大学でアメフトを続けていた。
ライスボウルを目指して、日々努力することは変わらない。
ジャリプロで仕事をしながら、その報酬をアメフト部の活動資金にすることも変わらなかった。
ただ1つ変わったことは、鈴音との関係だった。

セナは鈴音と距離を置いた。
特別避けるようなことはなく、親しい友人として接している。
だが恋人に見えるような言動は一切なくなった。
腕を組んで歩いたり、2人だけで話し込んだりしない。
鈴音と別れたのかと聞かれれば「最初から付き合ってないよ」と答えた。

一時期まもりの妊娠説まで飛び交ったヒル魔とまもりの噂は、ヒル魔の渡米と共に自然消滅した。
そしてセナと鈴音の噂ももはや消えかかっている。
こうして長く続いた不本意な2組のカモフラージュ恋愛は終わったのだった。

大学2年になったセナは、ひたすらアメフトに励んだ。
そしてチームはライスボウルを制し、セナはMVPを獲得した。
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