年下5題

□不思議なミリョク
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アメリカでデスマーチじゃないんですか?
中坊は表情にも口調にも不満を滲ませながら、言った。
その言葉に2年生部員はブンブンと首を振った。

今日のミーティングの内容は、夏合宿について。
主将のセナが、その概要を全員に説明しようとしていた。
まずは日程、そして場所。
東京からさほど遠くない海に近い合宿所で、2週間。
それを聞いた中坊は、思わず立ち上がって発言していた。

デスマーチは1年生部員たちの間では、まるで伝説のように語り継がれていた。
夏休みに、アメリカを横断する。
ある者はトラックを押しながら、またある者はパスルートを走りながら。
しかも脱落者は置いて行くという無茶苦茶な内容。
だが彼らは、誰1人脱落することなく、やり遂げたのだ。
そして素人集団だった泥門デビルバッツは、クリスマスボウルを制覇するまでに成長した。

当然今年の夏もデスマーチなのだと、中坊は思い込んでいた。
むしろ中坊の願望とも言えるだろう。
高校に入って、身長も体重もメキメキと増え、栗田の後継者だと評されたりする。
だが中坊本人からすれば、まだまだ栗田はおろか、十文字たちにも遠く及ばない。
その実力差を埋めるために、デスマーチは必須だと思っている。
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