ヒルセナ10題

□勝利を目指す
1ページ/3ページ

ありゃあ、完全にペース配分間違えやがったな。
ヒル魔はハァハァと大きく肩で息をするセナをスタンドから見守っていた。

クリスマスボウルが終わったセナはあちこちの運動部に借り出されている。
今日はラグビー部の助っ人だった。
アメフト部同様、東京都大会に出場したラグビー部だが、残念ながら早い時点で敗退している。
そして新チームの強化を狙いとした練習試合に、セナは出場していた。

デビルバッツのメンバーは総出で応援に来ていた。
鈴音などはこの寒いのに、露出が多いチアの衣装で声援を送っている。
何だか春の王城戦を思い出すね。
隣に座っていた栗田が、呟くように言った。
ヒル魔はセナから目を離さないままに栗田の言葉に頷いた。

相手チームは例えるならまさに王城のようなラグビーの強豪校だ。
普通に考えれば、泥門が勝てる相手ではない。
ましてやこれは練習試合だ。
勝ち負けよりも部員たちのレベルアップが目的のはず。
おそらく相手もそのつもりなのだろう。
泥門ごとき弱小高との練習試合に本気など出してないようだ。

だが、左ウィングから飛び出したセナが独走してトライを決めた。
まさにラッキーパンチ。その瞬間からゲームの雰囲気が変わった。
泥門ベンチは勝てるかもしれないと一気にテンションが上がり、相手校の顔色も変わった。
部員たちのレベルアップなどという考えはお互い吹き飛んだ。
泥門は徹底してボールをセナに集め始め、相手校は一気にセナをマークし始める。
まさに春の王城戦と同じ展開だった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ