ムサまも5題

□待ってた
1ページ/8ページ

「どうしてわからないの?あの子は瀬那じゃないわ!」
まもりの振り絞るような叫びにも、ヒル魔は表情を変えなかった。

最近のまもりは、頻繁にヒル魔のマンションに顔を出すようになっていた。
小早川家がセナを連れ帰るときに、手を貸した。
ヒル魔への想いのため、ヒル魔とセナを引き離すため。
後ろめたさは「それが2人のため」という大義名分で正当化した。
そして念願通り、ヒル魔とセナはそれきり会っていないのに。
まもりの心の憂いは、少しも晴れなかった。

だからまたヒル魔の部屋にやって来る。
拒まないところをみると、嫌がられてはいないのだと思う。
ヒル魔の部屋のドアは、常に施錠がされていない状態だった。
そしてオートロックの暗証番号は、ムサシやまもりがあっさり看破できるものだ。
つまりヒル魔の部屋は、簡単に侵入できる状態になっていた。

まもりはヒル魔の部屋に上がりこんで、ただただ一方的に話しかける。
手料理などを作ったこともあったのだが、ヒル魔はそれを口にしなかった。
次に訪問したときに、手をつけないままに腐敗し、悪臭を放っていた。
だから食事を取らせることはあきらめた。
それでも先日置いてあったブロックタイプのバランス栄養食は無くなっている。
どうやら自分なりに少しは食べているのだと思って、まもりはホッと胸を撫で下ろした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ