ヒルセナ5題4

□一緒のベッド
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セナを乗せた飛行機の事故のニュースを見たヒル魔は、自宅を出た。
墜落の可能性大。生存は絶望的。
テレビやネットのニュースを見ても、現実の出来事とは思えなかった。
乗客名簿に名前を見つけても、まだ信じられなかった。
そしてフラリとした足取りで、セナが住んでいたアパートへとやってきた。

古いアパートの鍵を破るなど、ヒル魔には造作もない。
そうして押し入った部屋は、ヒル魔のマンションとは違い、狭くて質素な部屋だった。
もう夜遅い時間だが、外から街灯の光が差し込んでいる。
部屋の照明をつけなくても、動き回るのに支障はないだろう。

今日の夕方、日本を発ったのだから、今朝まではセナはこの部屋にいたはずだ。
おそらく出発日当日まで使った荷物は、後日セナの両親か誰かが運び出すことになっているのだろう。
部屋にはまだベットと布団が残されている。
だがそれ以外はいくつかダンボールが積まれているだけで、ガランとしていた。

ヒル魔はそのままベットへと倒れこんだ。
そこにはまだほのかに残されたセナの匂い。
久々に嗅ぎ取った懐かしい匂いに、ヒル魔は動揺する。

ふとヒル魔は視線の隅に何かキラリと煌めく光を感じた。
どうやら外の道路を走る車のヘッドライトが室内の何かに反射したらしい。
光源は荷物が詰められ、ガムテープで梱包されたダンボールの上に置かれたもの。
ヒル魔は起き上がって、ダンボール箱に近づき、それを手に取った。

それは初めてヒル魔がセナに与えたもの。
緑色のプラスチック製の、アイシールドだった。
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