ブラックセナ5題

□騙されてたくせに
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「あ〜降ってきちゃった。」
セナはついに降り出した雨に、校門の前で困惑の表情で声を上げた。
放課後の練習中。空に雨雲が広がり、一気に暗くなった。
雨が降るかもしれない。もうすぐ試合もある。
体調管理第一と考えたヒル魔の鶴の一声で練習は早めに終了した。

今日は折りたたみ傘を持ってきていたと思ったのに、鞄の中に傘はなかった。
では駅まで強行突破で走ろうかと思ったが、雨の勢いは強い。
セナは校内へと身を翻して走りだした。校庭を横切って部室に向かう。
部室には確かビニール傘が何本かあったはずだ。

部室の前まで戻ってきたセナは、部室の窓に人影が映っているのを見て安堵した。
もう全員が帰ってしまい、鍵が掛かっている可能性も高かったからだ。
誰かいるなら、鍵は開いているだろう。
人影は2人だった。
顔ははっきりとわからないが、1人は逆立てた髪と尖った耳につけられたピアス。
もう1人は体型から女性だ。髪型や身長から鈴音ではない。

ボソボソと話し声が漏れている。
何を話しているかはわからないが、一応ノックくらいはしようか。
セナがそう思って、ドアに手を翳して軽く拳を握った瞬間。
幼い頃からよく知っている女性の声が聞こえてきた。
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