そどむ 短篇
□出会い
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「今日からトシに剣術を教わってくれ」
そう言って近藤は少年を土方に預けた
突然道場に二人置いてきぼりにされ、戸惑う少年。
一方土方はこんな細い身体の少年が本当に使い物になるのかと半信半疑であった。
「おい」
土方が声をかけるとビクリ、と肩を震わせる。
そんな野良猫のような少年の反応に土方は苦笑する
「別にとって食いやしねーよ」
そう言って少年の頭をワシワシと乱暴に撫でた。
殴られるのかと咄嗟に目を瞑り身を堅くした少年が、そうっと目をあけると
土方の無愛想だけれど優しい瞳が目に入る。
少年は驚いたように瞳を真ん丸く開き、土方の顔をじっと見つめる。
土方はそんな少年の表情を見て、彼の緊張がゆるんだのをたしかめる。
「よし、まずは何でもいいから俺にかかってこい」
そう言いながら竹刀を少年に渡す
「まずは俺から一本とれるようになってみろ。」
そう言われても少年は竹刀の持ち方さえめちゃくちゃだ。
土方はフゥ、とため息をついて少年の背中にまわり、抱き締めるように少年の身体に竹刀の持ち方を覚えさせる。
「背筋をのばせ」
「顎を引け」
「そうだ、いいぞ。」
少しずつ、格好がついてくる。
少年は土方の言うとおりに動いた。
必死に、彼の視線を追って、彼の理想とする姿に自分をあてはめようとする。
「よし、そのまま打ち込んでみろ」
パアン!!
思いの外、力強い打ち込みだった。
「いいぞ!」
そう言って土方が少年の頭をわしゃわしゃと撫でる。
少年はとまどいながら、でも少し嬉しそうな表情をつくる。
(……なんだ、可愛いじゃねぇか、コイツ。)
土方は警戒心を解いた野良猫が自分に少しずつ心を開きはじめていることを実感していた