Princess Oath

□小さき光と小さき声
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「『空気が重い』…ですか?」

「うん、そう」


 ガキンッ と優音の斬撃を自分の剣で受け止めながら晃夜が聞いた。

2人が今いる所は、城の中にある修練場。

日々ここで城の兵達が鍛錬しているのである。

いつもだったら各自で鍛錬をしたり、コンビを組んで鍛練している兵達だが、
今はみんなで優音と晃夜の斬撃攻防戦を観戦している。


「『重い』っていうか、何というか・・・」

「『奇妙な感じがする』ですか?」

「まぁ、そんな感じ」


優音が繰り出す斬撃を晃夜は受け流す。

そのまま晃夜は横一文字に剣を薙ぎ払う。

が、その刃が優音に届く前に優音は跳躍し、宙で一回転して着地する。

その身軽な動きに、観戦している兵達は「おぉ」と喚声を上げる。


「私の気のせいかなぁ…?」


晃夜と距離をおいた優音が、剣を両手に構えながら首を傾げる。


「昨夜のことで、気が敏感になっているのでは?」

「…そうかも。やっぱり気のせいか」


なんとなく自分を納得させた優音。

そして突っ込むように晃夜の方へ向い、剣を振り落とす。

しかし、それも晃夜の剣に止められ、鍔迫り合いのような形になった。


「ところで晃夜。なんか前より強くなってない?」


前まですぐ負けてたのにと言う優音。

その問いかけに晃夜は爽やかに答えた。


「あれから何年も経ってますから。それに…
 いつまでも負けてばかりではいられません!」


そう言うと晃夜は優音を押し返した。

その力が思っていたよりも強かったのか、後方に飛ばされた優音は少しバランスを崩す。

そしてすぐに体勢を立て直す。


「なるほどね。っていうか、晃夜にここまで押し返されるなんて」


自分から晃夜までの距離を見た優音は、晃夜の力強さに驚いた。


「私も負けていられないわね!!」


剣を構え直した優音は地を蹴った。




その足元に黄色の物質が突如現れたことなど知らずに。
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