小説庫

□なのはA's 〜異端再劇〜
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人はよく「もしも」という言葉を紡ぐときがある。

それは仮定でしかない『IFの話』。

その結末は「もしも」である以上誰にもわからない。

何が変わって何が変わらないのか・・・・・。

これから語られるのはそんな『IFの物語』

1人の少年の存在が何を変えるのか。

果たしてそれを知っているのは神かそれとも悪魔か・・・・・。



魔法少女リリカルなのはA’s IFストーリー
異端再劇

第一話
突然に、必然に 





6月3日 海鳴市 中丘町 PM9:25

「ふ〜さっぱりした」

1人の少年が頭を乱暴に拭きながらリビングの扉を開ける。

すると、電話の前に車椅子の少女がいた。

どうやら留守番電話のメッセージを聞いているようだった。

『明日病院に来る前にでもお返事くれたらうれしいな。よろしくね』

『−−−メッセージは以上です』

独特の電子音とアナウンスの後、電話が沈黙する。

「今の声、石田先生か?」

少年の声にゆっくりと少女が車椅子ごと振り向いた。

「あ、勇君。うん、明日私の誕生日やからお食事でもどうかって」

「おお、もうそんな時期だったか」

少女の言葉に大げさに驚く少年

「もう、家族の誕生日くらい覚えといてな」

少年の言葉に対し少女が少し不満そうに言い返す。

「スマン、スマン。いやいや、それにしてもはやてももう9歳・・・・一桁最後の歳か。早いもんだ」

「なんか妙な言い回しやね」

はやてと呼ばれた少女が苦笑いを返す。

「何はともあれおめでとう・・・・は明日までとっておいて、プレゼントは期待しないで待っててくれ」

「それを言うなら『期待して』やろ?」

「そうとも言う。じゃ、俺は寝るからお前も早く寝ろよ?」

少年はそう言うと後ろ手を振りながらキッチンへ消えていった。




同日 PM11:59

はやての部屋から然程離れてはいない部屋にはやてから勇と呼ばれた少年がいた。

勇はベッドに横になって天井を見つめている。

「ここへ来て随分と経つが、まだなのかね」

誰も居ない部屋で呟いた独り言に、どこからともなく若い男の声で返答があった。

≪あの方は次の主は彼女で間違いないと言っていました≫

その言葉に別の若い女の声が続く

≪それに覚醒の時も近いって言ってたし≫

「その近い、とはどの位の時間を言ってるのかね〜」

≪そこまで正確にはわかりません。≫

「そうか」

元から答えを気にしていなかったように素っ気無く答える勇。

見えない誰かと話をしていると壁に掛けてある時計が0時を知らせる鐘を鳴らした。

それと同時に、女の声が上がる。

≪巨大な魔力反応確認。ついに来たわね≫

「噂をすれば・・・か」

勇が半身を起こし、はやての部屋の方向を半ば睨むように見つめる。

「もうすぐ、この家族ごっこも終わりだな」





半年後 12月2日 夕刻

風芽丘図書館の駐車場で車椅子に乗ったはやてと妙齢の女性二人が歩いていた。

はやては車椅子を押している金髪の女性をシャマル、傍を歩いているピンクに近い赤い髪をポニーテールにしている女性をシグナムと呼んでいた。

「そういえば、ヴィータはまた何処かお出掛け?」

「あぁ・・・え〜っと・・・・そうですね」

金髪の女性、シャマルが困ったような表情で歯切れ悪く答える。

「外で遊び歩いているようですが、ザフィーラが付いていますのであまり心配はいらないですよ」

シャマルと反してはっきりと、しかし優しい口調でシグナムが告げる。

「そっか・・・」

納得したようだが少々寂しそうにはやてが呟いた。

その雰囲気を悟ってシャマルがそれを打ち消すように優しく言葉を紡ぐ。

「でも、少し距離が離れても私たちはずっとあなたの傍にいますよ」

シグナムもその言葉に続く

「はい。我等はいつも貴女の傍に」

2人の言葉にはやては嬉しそうに顔を綻ばせる。

「ありがとう」

と、シグナムが何かを思い出したように声を上げた。

「そういえば・・・・」

「どうしたん?」

「はい。ここへ来る前に連絡があったのですが、勇が今日は部活で遅くなると申しておりました」

「そうか・・・どの位遅なるって?」

「申し訳ありません。それについては聞き及んでいません」

シグナムの答えに少し顔を伏せるはやて。

「あんまり遅なるんやったら、ちょっと心配やな」

「大丈夫ですよ。勇君、お歳の割にしっかりしてますから」

「そう・・・やね。でも、遅すぎるようやったら迎えに行ってやってな」

「はい。畏まりました」

はやてのお願いにシグナムが微笑みながら返事を返した。






同日 PM7:45 市街地

「今日はヴィータとザフィーラか・・・・・・お、ザフィーラは別の場所へ行ったか」

ビルの屋上に1人の男が立っていた。黒のジャケットと黒い皮のロングパンツ。黒い踝に届きそうなほどのロングコートをはおり、漆黒の長髪をうなじあたりで無造作に結っている。そんな夜闇に溶け込みそうな容姿をしながらも、その顔に着けられた白い般若の面が闇の中で彼を際立たせていた。

そんなちぐはぐな組み合わせに更に不釣合いにも軍事映画で出てくるような光学スコープを面を着けたまま覗いている。

ナイトヴィジョン独特の緑色の画像で写し出されたヴィータは徐に身の丈ほどのハンマー・・・デバイスのグラーフアイゼンを掲げると魔方陣を発生させる。

そしてグラーフ・アイゼンが鈍く光り、魔法が発動された。

「封鎖結界・・・魔導師だけを炙り出すつもりか」

スコープから目を外し、ビルの下を見ると次々と人や車が消えていく。

「アロン。こっちの存在に気づくと思うか?」

誰も居ないビルの屋上で誰かに話しかける男

しかし、その問いに返ってくる声があった。

それは腕に嵌められた腕輪からだ。左右でそれぞれ紅と白の宝石が埋め込まれた銀細工の腕輪、それは彼のデバイスだった。

≪結界内にAAAクラスの魔力反応が有りますから、そちらに気を取られると思われます≫

≪薬を使ったらわからないけどね≫

付け加えるように別の声が上がった。

「なら、使わないまでだ。お前等、残留魔力はどのくらいある?」

≪私は40ほど≫

≪ワタシは20もないよ≫

その答えにしばし考え込む男。

「アルミスは少し節約を考えろ。・・・とりあえず局部強化でいけば何とかなるかな」

そう呟いたところでヴィータが移動を開始した。

「俺たちも行こう。アロンの魔力をアルミスへ転送。局部強化開始。選択、脚部」

『Point Boost』

白い宝石が光り、足元に緋色の魔方陣が発生する。

その直後、男はまるで飛び石を渡るようにビルの屋上を飛び移りながらヴィータの後を追った。

ヴィータに覚られぬよう、且つ見失わないようにつかず離れずの距離を維持して彼女に追従する男。

暫く行くと、彼のデバイスが声を上げた。

≪目標がターゲットと接触しました)≫

「肉眼で確認した。ってかあんな子供がAAAかよ。世の中わからんもんだね。・・・距離もちょうど良いし、この辺で仕事にしますか。」

≪≪了解≫≫

少し高めのビルの屋上に着地し、再びスコープを覗き込む。

ちょうどAAA魔導師の少女・・・・高町なのはがバリアジャケットを装着し終わったところだった。

「やはり、子供だよな」

≪ですが、年齢だけでは判断できません≫

紅い宝石のデバイス、アロンが窘めるように声をかける。

「まあな。っとジャケット装着と同時に誘導弾2発撃っていたのか。確かに侮れんな」

スコープで2人の戦闘を傍観する。

「ベルカの騎士は対人戦特化型というが、相手は子供とはいえAAAクラスだ。果たしてどうなるやら」

まず動いたのはなのはだった。ご自慢の魔力砲、ディバイン・バスターを放った。

「うへ、なんつー砲撃だよ」

しかし、ヴィータはディバイン・バスターを辛くも避ける。

だが、避けきれずに砲撃がかすり帽子が宙に舞った。

「あ〜。帽子落とされてヴィータの奴かなり怒ってんな」

次に動いたのはヴィータだった。カートリッジで爆発的に底上げされた魔力でグラーフアイゼンをラケーテン・フォルムへと形状変化させ一気に突っ込む。

なのははシールドを張るも無残に打ち抜かれ、デバイスのレイジングハートまで半壊させられてしまい、さらに吹き飛ばされてビルの中へ突っ込んだ。

「勝負あり、だな。向こうさんもなかなかの手練だっかが、やはりベルカの騎士のほうが対人戦では一枚上手か」

スコープから目を離し確認するように呟く。

≪強い魔力衝突を確認。AAA魔導師の魔力反応かなり弱くなったよ≫

白い宝石のデバイス、アルミスがビル内の状況を伝える。

「終わったか。俺の出る幕がなくてよかっ・・・・・」

≪ミッド式の転移魔法を確認≫

男が言い切る前にアロンが声をあげた。

男がはじかれたようにスコープを覗く。

「助っ人か・・・人数は?」

奥の方に居るのかスコープだけではビル内が確認できなかった。

≪3人です。いずれも実力者と思われます≫

「・・・・・・・何とか退けてくれたら俺としては有難いんだがな」

男の苦虫を潰したような呟きは夜風に攫われて誰の耳にも届くことはなかった。






次回予告

舞台に上がった彼女たちを待っていたのは戦いの鐘。

ぶつかり合う魔導師と騎士達。

それを傍観する一人の観客、般若の男。

歯車の歪みはまだなりを潜めその先を見るものはまだ誰も居ない。


『魔法少女リリカルなのはA’s IFストーリー 異端再劇』

活目して、待て。






あとがき

魔法少女(勝手に)はじめました。(笑

さて、この小説はなのはA'sの再構成ものになります。一応ストーリーはアニメと同じように全13話で終わらせようと思っています。というわけで、今回のお話はアニメ同様フェイト達が現れたあたりで終わりにしました。

因みに、アニメのストーリーをいじらない部分は書かずに進めますので(居ないとは思いますが)A's本編を見てから読んでいただくと助かります。

それから、幾つか小説は書いたことはありますが、このような再構成もので且つ1話毎の話というのは今回が初めてでありまして、次回予告は結構適当に書いてあります(爆)。そして、あとがきも書く機会が少なかったので、ぶっちゃけなにを書いていいのかさっぱりです。(ォィ それはもうさっぱり妖精が出てきそうなほどさっぱりです。(さっぱり妖精知ってる人どの位居るかな?)

こんなだめ人間が書く駄作ですが呼んでいただけたら幸いです。

では、皆々様方。次回またお会いしましょう。さよ〜なり〜
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