小説庫

□月姫×なのはA’s 〜月星舞踏〜
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世界が死に満ちている―――

視界に死が満ちている―――

「ああ――もう終わりなのか」

そう、『これ』は終わりを意味する。

終わりは終焉。終焉は崩壊。崩壊は―――『死』

死・・・そう、死ぬ。

誰が?自分が?

そうだ。そんなのとっくに解りきってたことだ。

どうして?

俺はもう死の塊に過ぎないから。

だから、今ここで死ぬ。それが、俺には解る。

この目には見えているんだ。



遠野志貴が



死に



塗りつぶされる様が



もはや、死しか捕らえられない目を開ける。

その目が最後に見たのは虚空に輝く真円の月だった。



―――ああ、きがつかなかった



―――こんやは、こんなにも



―――つきが、きれい―――だ








月姫×魔法少女リリカルなのはA's クロスオーバー

『月星舞踏』

第一話




ふと、唐突に目が醒めた。

起き抜けで頭がボーっとする。躰も重い。まるで何日も寝ていたようだ。

―――そうだ、この感覚は『あの時』に似ている。

けど、『あの時』がいつの事かなんて忘れてしまった。思い出す気も無いけど。

段々と焦点が合ってきた。

見えるのは白い壁・・・いや天井か。

鼻を突くのは薬品臭。

肌に感じるのは布団の感触。

ゆっくりと頭を左に向ける。

白いカーテンの向こうによく晴れた空が見えた。

―――ああ、いつになくいい天気じゃないか。

『・・』が起こしに来るよりも早く目が覚めるなんて、我が事ながら珍しい。

―ー―?

今、俺は誰を思い出していた?

よく思い出せない。

おかしな話だ。何を思い出していたのかも思い出せないなんて。

そろそろ起きよう。起きてあいつを驚かしてやろう。

―――あいつ?あいつって誰のことだ?

ゆっくりと体を起こす。

ただそれだけの事がひどく重労働に思えた。やけに体が重い。

―――――トン、トン、

「失礼します」

扉をたたく音が聞こえたと思ったら誰かが入ってきた。

白衣を着た知らない女性。

彼女ではなかった。

その人は俺と目が合うと一瞬驚きの表情を浮かべ、微笑みながら近づいてきた。

「よかった。目が覚めたのね」

その人は俺の傍まで来ると触診を始めた。

「・・・うん。とりあえず大丈夫そうね」

手元にあったバインダーになにやら記載し、後ろのページと見比べている。

とりあえず、疑いようもなく医者だろう事はわかった。

「・・・ここは?」

初めて声を上げて違和感を覚えた。けど、どうしてなのかはわからない。

頭の中に深い霧がかかったようにぼんやりしている。

「ここは海鳴大学病院よ。私の名前は石田幸恵、ここの医師よ」

海鳴大学病院。聞いたこともない。

「君のお名前は?」

「・・・・志貴」

自分で答えて、そういえばそんな名前だったな。と他人事のように思った。

「志貴くんね。いろいろ聞きたいことが有るんだけど、とりあえず起きたばかりだから重要なことだけ2つだけ聞かせて?」

石田という女医の言葉に頷いて返す。

「君のお父さんとお母さんは今何処に居るの?それから君は何処から来たの?」

おとうさんと・・・おかあさん?

昔、そんなヒトが居たような気がするけど、もう顔も名前も忘れてしまった。

どこから・・・?

俺が居たのは・・・森の中の村・・・いや、大きな屋敷だったっけ?

いや、ソコにも随分と長いこと帰っていないような気がする。

じゃあ、今まで何処に居たんだっけ?

昨日の事すら思い出せない。昨日俺は何をして・・・・・

―――ドクン

今、何かが見えた、

―――ドクン

今、イヤな物が見えた、

―――ドクン、ドクン

思考がどんどん澄んでくる。

―――ドクン、ドクン

思い出したくない。なのに、記憶が勝手に出てくる。

―――ドクン、ドクン、ドドクン

・・・・・・・・ああ、そうだ。思い出した。

『俺』はあの時――

『死んだ』んだ――










「どうしたの?大丈夫?」

石田医師が心配げな顔で俺を覗いてくる。

「ごめんなさい。何も思い出せません」

咄嗟にそんな言葉が出た。

石田医師は一瞬驚くと、バインダーに何やら書き込む。

難しい顔をしながら「まさか、記憶障害?」などと呟いている。

「・・・あの、俺はどの位寝てたんですか?」

「えっと、そうね。3日位かしら」

僅かに渋るような表情をしたが、そう答えてくれた。

「私が主治医をしている女の子があなたを見つけてここまで連れてきたの。家の前で倒れてたって」

石田医師が続ける。

―――おかしい

俺はあの時確かに月の見える丘で倒れたはずだ。

それに、さっきから妙に体に・・・というか俺という存在に違和感がある。

まるで俺ではないような、けれど確かに俺だと理解している感覚。

あたかも肉体(からだ)と魂(こころ)が別物であるような感じがする。

そんなおかしな感覚に戸惑っているときに、ふと窓に映る自分が視界に入ってきた。

―――な、んだ。これは。

それは、まるで出来の悪い悪夢のような光景だった。

―――ありえない。

この光景は異様だ。

―――どうして、俺が・・・・

絶対に起こらない現象がそこにあった。それは・・・・

―――子供になったるんだ?

身体が10歳頃の姿になっていた。











俺が今の自身の姿に戸惑いを隠さずにいると、石田医師はそれを記憶がないことの戸惑いと受け取ったのか励ましと労りの言葉と、時間を空けてからまた来ると言い残して退室していった。

俺はと言えば最早混乱以外の言葉が当てはまらない位混乱していた。

確かに死んだはずだった。

今でもはっきりと記憶に残っている。

世界が、視界が、『死』に支配される様を。

「・・・・・・ってちょっと待てよ」

あることを思い出して自分の顔を両手で撫で回す。

「な、い」

ない。ナイ。無い。

「どう・・・して」

有ったはずのものが無い。それなのに『視える』はずの物が『視えない』。

「なんで『包帯』どころか『魔眼殺し(めがね)』もないのに『線』も『点』も視えないんだよ」

目が覚めてから、一番の驚愕の事実だった。

もう、何が何だか解らない。ワカラナイことだらけで頭がオカシクなりそうだ。

―――トン、トン

扉を叩く音。

混乱を通り越して混沌としていた頭が、少し落ち着いた気がした。

「はい」

ここは個室。俺以外誰もいないのだから必然と俺に誰かが会いに来たのだろう。そうでなければただの間違いだ。

石田医師だろうか。俺に用がある人物といえば彼女だけだろう。

しかし、扉を開けて入ってきたのは全く違う人物。

「あ、よかった。目ぇ覚めたんやね」

車椅子に乗った少女だった。

「君は?」

「あ、私、八神はやて言います。君の名前はなんて言うん?」

「志貴。とお・・・・・七夜志貴」

俺の名前のを聞くと少女は顔を笑みに染め、握手を求めるように手を出してきた。

「志貴君な、よろしく!」

それが、俺とはやての最初の出会いだった。

ここで紡がれた縁がトンデモナイ運命を引き寄せるとは、まだこの時は知らなかった。




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あとがき

(無断)出張版 教えて!知得留先生!!

知 「さてさてやってまいりました。月姫といえば遠野君、あとがきと言えばこのコーナー!!教えて!知得留先生!!のお時間です」

ネコ 「う〜ん。勝手にこんなコーナー作っちゃっていいんかにゃ?月型への冒涜とあちしは思う今日この頃」

知 「いきなりですね。大丈夫です。ちゃんと『出張版』とありますから」

ネコ 「あちしの目が耄碌してなければ『無断』にゃんて文字が視えるのは気のせいかにゃ?はっ!!まさかあちしにも見えざるものが見えるという浄眼が!?それとも大源の渦からの情報!?ま、とりあえず醜い大人の言い訳は聞きたくないにゃ」

―――シャキーン(黒鍵投げる音)

知 「それでは、仕事に戻りましょう。優しい読者の皆様は個人で楽しむささやかなコーナーとして生暖かい目で見守ってくださいね」

ネコ 「今の台詞にこの作者の覚悟のなさが伺えるにゃ」

知 「さて、そんな図星は無視して本題です。とりあえずこの小説は『魔法少女リリカルなのはA’s』と『月姫』のクロスオーバー作品です。時間軸的には月姫側は殺人貴となった遠野君が死んだ直後、リリカル側は最初の戦闘後位です。」

ネコ 「ん〜でも、ぶっちゃけ殺人貴の志貴ってどんなのか作者はわかってるのかにゃ?」

知 「本人曰く設定や小話なんかで最低限の知識はあって欲しいといっていましたね」

ネコ 「ふむ、なんという投げやり。とりあえず、訴えとく?そして賠償金ネコ缶1億年分請求する?」

知 「そんなことしたら作者が逃げてこの話が進まなくなるじゃないですか!それは最終話が終わってからにしてください。私は出番がほしいんです!!」

ネコ 「切実にゃ・・・」

知 「さて、はじまったばかりなので今回は特に補足はありませんね。と、言うわけで今日はここまでです。みなさん、さようなら」

ネコ 「短っ!そんにゃふうにサボるから尻に肉が付いてデカ尻エルにゃんて・・・・」

―――ズドーーーン(第七聖典)

知 「ふう、お掃除完了です。みなさんも口は災いの元という諺をしっかり覚えておきましょうね。では、改めてさようなら」

終われ
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