作品置き場2

□A穏やかな眠りを貴方に
1ページ/2ページ


少し肌寒い。自らを抱くように腕を組み、彼女の部屋のドアをノックする。

「どうぞ。」

中から儚げな声が聞こえた。
扉を開け、中へ足を踏み入れると、幾分か暖かいのがわかる。


「…どうしたの?日番谷君。」

縁側に座ったままこちらを向き尋ねる彼女。
別に、と呟き彼女の隣へ行き、そこに腰をおろした。
彼女はしばらく不思議そうな顔をしていたが、気にするのをやめたのか、視線をもとに戻した。

「…星が綺麗だね。」

夜空を見上げて呟く彼女の顔を盗み見る。
月明かりに照らされたその顔は、弱々しくて今にも消えてしまいそうだった。

(…眠れないんだな)

彼女の目の隈がひどい。可憐な顔立ちの彼女には似合わない。ああ、ついでに涙の跡も見付けてしまった。

…空では星が踊り、月が笑っている。広がるその輝きに、俺は自分の小ささを感じた。

「…雛森、」

(今誰のことを考えている?)


「何?」

彼女は空から俺へと目線をずらす。


「……お前ずっとこんなトコいると風邪引くぞ。中入れ。」

言いかけた言葉を飲み込んだ。
だって答えはわかってる。


立ち上がり、彼女に手を差し伸べると、彼女は首を横にふった。

「…ここにいる。」

空が見たいから、と言う彼女に、俺は小さく溜息をついた。


「…しょーがねえな」

そう言って押し入れに行き、中から毛布を取り出すと、彼女に投げ渡した。

「寒いだろ」

「…うん」


彼女は頷くと、何か言いたげに俺の方を見た。


「…何だ?」

すると、彼女が俺を手招いた。

「座って、ここ」

自分の隣をぽんぽん、とたたく。
大人しくそれに従うと、彼女は俺にぴったりと寄り添い、2人の膝の上に毛布をかけた。


「…あったかいね。」

彼女は微笑んだ。
俺は照れくさくなって、お前が幼児体温なんじゃねぇの、と返すと、案の定こぶしが飛んできた。


俺達はしばらく夜空を見上げていた。

不意に、肩に重みを感じた。
見ると、彼女が頭を俺の肩にあずけている。

「…どうした。」

聞くと、彼女はゆっくりと口を開く。


「…あたしね、」

ぽつりぽつりと紡ぎ出される言葉に、俺は耳を傾けた。

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ