作品置き場2

□A穏やかな眠りを貴方に
2ページ/2ページ


「……眠れないの…」

「………」

「…寝ようとするとね、あの時のことが思い浮かんできて…悲しくなるの…」

「………」

「でもね…まだ、信じきれないの」

「………」

「…あんなことされてもね、あたしは、藍染隊長は悪くない、きっとまた帰ってくる…って思っちゃうの…」

「………」

「……バカだよね…」

「雛森…」


たまらなくなって、俺は彼女の肩を抱き寄せる。
そのまま頭を撫でてやると、彼女の瞳が潤んでいるのがわかった。


「……無理すんな」

そう言った途端、彼女の頬を、涙が一筋つたった。
空いてる方の手でそれをぬぐってやる。


「……っ日番谷君」

「…あ?」


「…日番谷君は…お月様みたいだね…」

「……?」

「…あたしがどんなに暗闇にいても…静かに照らしてくれる」

「………」

「…ありがと…」


泣き声で言う彼女に、俺は、ふぅ、と1つ息を吐く。


「……じゃぁお前は太陽だな。」

「え…?」


「月は太陽に照らされて輝くんだぞ?」


目を丸くしていた彼女が嬉しそうに笑った。



「……子守歌うたってやろうか」

「え〜…日番谷君あんまり上手じゃないから…」

「…何だと」


そのまま俺達はくだらないことを話し続けた。



「…そしたらばあちゃんがな……雛森?」

彼女からの応答がない。見ると、俺に寄りかかったまま、穏やかな寝息を立てて寝ていた。

「………」

─ 良かった。少なくとも今は、アイツのことを考えなくてすんでるんだな。


彼女を起こさないように頭だけを動かし、空を見上げる。

(なあ、雛森)


─ 俺は月なんて大層なものじゃないし、なりたくもない。
だって、闇にさ迷うお前を照らせても、手をとることはできないだろう?

だから、俺はいるよ、君の隣に。
例え先の見えない深い闇の中にいても、手を繋げばこわくないだろう?


寒さに震える時には体温を、
孤独に涙する時には居場所を、
悲しくて眠れない夜には……


「…おやすみ、雛森。」


少年は優しく微笑むと、静かに穏やかな眠りについた。



END

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ