作品置き場2
□C星の降る夜
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流れ星に願えば叶うなんて、誰が決めたのだろう。
どんなに祈っても願っても、彼女の願いが叶う事はなくて。
遠ざかる彼との距離が悲しくて、雛森はそっと息を吐いた。
見上げた夜空の星はとても綺麗で、その輝きが今の彼女にはとても辛かった。
『星の降る夜』
仕事を終えた雛森は重い足取りで自室へと向かう。
特に仕事で失敗したわけではない。
いつも通りに仕事を終えたつもりだ。
ただ。
「……今日も日番谷くんに会えなかったな」
ぽつん、と呟き、雛森は俯いた。
彼が忙しい人だという事は彼女もよく知っている。
彼は十番隊隊長なのだし、雛森自身、五番隊の副隊長なのだから、会えなくても仕方のない事だと。
そうわかっているけれど。
それでも、寂しくて、彼に会いたくなる。
……傍にいてほしくなる。
「会いたいな」
会いたい、と繰り返して、雛森は空を見上げた。
瞬く星はとても綺麗で、ぼんやりと彼女は空を見つめる。
「……流れ星に願えば叶うなんて、誰が決めたのかな」
そう呟き、雛森はそっと息を吐いた。
幼い頃は流れ星に願えば叶うのだと信じていた。
祈れば幸せになれるのだと、そう信じていたのに。
けれど、願うだけでは駄目なのだと、いつからか気づいて、雛森は星に願う事をしなくなった。
「綺麗だなぁ」
久しぶりに見た夜空はとても綺麗で見惚れていると、自分に近づく気配があって、雛森が振り返るより早く。
「何やってんだ、こんな所で」
「……日番谷くん」
かけられた声に驚きながらも、雛森は彼を見返した。
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