作品置き場2

□C星の降る夜
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 真っすぐに自分を見つめる日番谷の目は幼い頃と全く変わらなくて、その事を嬉しく思いながらも、雛森は寂しくなって、小さく笑う。
 変わったのは自分だけみたい、と思うと何だか寂しかった。
 昔、信じていたものを信じられなくなったり、無邪気に笑って彼の隣にいられない事が何よりも悲しくて。
 けれど、そんな感情を彼に悟られないように、雛森は笑う。
「星を見てたの」
 あんまり綺麗だから、と言えば、そうか、と彼は呟いた。
 そして、ふとある事に気づき、日番谷は来ていた羽織を脱ぎ、雛森の肩にかけてやる。
「着てろよ、風邪ひくから」
「でも……」
 日番谷くんが、と躊躇う雛森に日番谷は小さく笑った。
「俺はいいんだよ。それより、お前に風邪でもひかれたら困る」
 気遣う日番谷に雛森は笑みを浮かべて、礼を言う。
「……ありがとう、日番谷くん」
 そっと触れた羽織には、まだ彼の体温が残っていて。
 雛森はそれを手放さないようにと、ぎゅっと羽織を握り締めた。
 それを見ていた日番谷は空を見上げながら口を開く。
「そう言えば、今日だったな」
「今日?」
「あぁ。今日は流星群が見えるんだと松本が言っていた」
 だから、お前も空を見ていたんじゃなかったのか、と言われ、雛森は言葉に詰まった。
 そんな事は知らなかった。
 ただ夜空を見上げていただけで。
「……知らなかった」
「そうか」
 雛森の声に頷きながら、日番谷は何かを思い出したのか、ふと雛森の顔を見つめる。
「お前の事だから、何か願うんだろ?」
 口元に笑みを浮かべて、そう言う彼に、今度こそ雛森は言葉に詰まった。

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