作品置き場2
□Lこの想いが恋だなんて
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自由に空を飛びたかった。
走って、息を切らせながらも笑える体が欲しかった。
願ったのは、床に伏せてる病弱な体なんかじゃなくて、走り回れる健康な体だったのに―…
「…桃、…お友達よ?」
キィと開かれた扉に瞳を見遣れば、いつも泣き腫らした瞳をした無表情の母が立っていた。
桃と呼ばれた少女は真っ白な屋敷に相応しい、色白で腰まである黒髪を窓から優しい風が靡かせながら、ベットに座り優しく微笑んだ。
扉から母の姿は見当たらなく、お友達と称された少年がそこには立っていたのだ。
「二週間ぶり、…日番谷くん」
日番谷くんと呼ばれた少年は、無愛想な返事をし、部屋に入り近くにあったパイプ椅子に腰掛ける。
「…少し、痩せたか?」
「点滴ばっかりだからね…」
苦笑したまま言葉を濁す彼女の顔は青白く、病人だということを無言で知らせる。
「…もうすぐ…1年だね」
晴れ渡った空を見上げながら、桃は静かに呟いた。
そう、二人が出会って1年が経とうとしていた。
病に体が蝕まれていく中、生きることを諦めた桃の前に日番谷は現れたのだ。
桃の父親は、日番谷の父親とは同級生で、そんなことを知らない日番谷は、通学途中いつも窓から哀しい瞳で空を見上げていた桃に見惚れていた。
そんなある日、父親から行ってほしい場所があると言われ、着いた先はいつも見惚れていた少女の屋敷だったのだ。
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