作品置き場

□つないだ手
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人は死ぬ時、走馬灯のように記憶を思い出すという。

今まさに、それなのだろうかと思うぐらいだ。別に死ぬ訳ではない。ただ、立っている事が出来ないだけだ。


俺にとっての走馬灯で蘇る記憶はただ一つ。



お前と過ごした多くの日々だけ。


















―つないだ手―




目覚めれば、そこは四番隊の救護詰所だった。朧げな記憶を辿ってみれば、分かるのは高熱で倒れたという事だけ。

最近の稼働率を見れば、他隊に比べ断然と十番隊が1番忙しかった。そのせいか、十番隊では体調不良により、隊員の殆どが倒れるというウイルス期間に突入していた。


「休んで下さい」という副官の言葉も無視し、その罰でも当たったのだろうか。遂には執務室で倒れるはめになってしまった。


相変わらず、体は重いままだが窓を見れば夜だという事は考えなくても分かる。恐らくは昼過ぎに倒れたのだろう。ならば、数時間は眠っていた事になる。此処に運んだのが副官だとして、姿が見えないところ、未だ残務整理をしているのだろうか。いや、真面目とは程遠い副官だ。考えるまでもなく、京楽辺りと酒を飲んでいるに違いないだろう。

そんな事を考える頭があるのなら、少しは熱が下がったのかと思い、体を起こせば先程まで見えなかった女の声が耳に響いた。

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