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□ Chapter2 運命のうず
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結局、ほとんど眠れないまま朝を迎えた。
トレセンには約束の時間より1時間近く早く着いた。
それでも、体育館のフロアからはすでにボールの弾む音がしている。
フロアに近づくごとにその音はだんだん大きくなって。
そして ───
私はとうとうフロアの扉の手前で立ちすくんだ。
『なんだ!そのトスは!!』
『違う!』
『違う!!』
“お前のトスには
心がない ─── ”
くっ ───
嫌っ ─────
知らずのうちに涙がにじむ。
ガクガクと膝が震えるのがわかった。
とうとう耐えきれず、扉に背を向け走り出した瞬間……
バンッ!!
「きゃっっ!!」
「うわっ!!」
ドサッ。
ハデに誰かにぶつかり、尻もちをついた。
持っていた荷物があちこちに散らばる。
「ぇ……」
私は状況が理解できずに、尻もちをついたまま、転がるテーピングを見つめていた。
「おい、大丈夫か?」
「あっ…、はい…」
かけられた声に、我にかえって、顔を上げる。
途端に、はるか上の鋭い瞳に気圧されて、私はその目をみつめたまましばらく視線をそらせずにいた。