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□ Chapter3 才能の価値
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「絵理香…!?」
午後の練習が始まる直前。
突然聞き覚えのある声に呼ばれた…。
まさか ───。
そんなはず ───。
高鳴る鼓動を抑えることもできず、おそるおそる振り返る。
ドキン…。
そこには本当に優が立っていた。
「優…。 な…んで?」
「なんでって…。 オレ、全日本のメンバーなんだけど…。」
「えっ…」
優が…? 全日本…。
状況がまだのみこめなくて、頭の中で繰り返す。
午後から合流する全日本のメンバー。
最後に現れたのが優だった。
優とこんなところで再会するなんて…。
立ちつくす優を見つめながら、どこかで何かが動き始めた気配を、私は必死に打ち消していた。
「絵理香…あのさ、オレ…。」
優が切り出す言葉にドキリとして、私はおずおずと視線だけで答える。
3年前のあの日、傷ついた優の顔がフラッシュバックして。
顔がこわばっているのが自分でもわかった。
「越川、絵理香ちゃんと知り合い?」
朝長さんが、ふいに二人の沈黙に割り込む。
私はこの緊張が解けたことにまずはホッとした。
「あっ、あの…」
「あっ、越川さん、トレーナー待ってますよ。」
そして、優が答えに窮する間に、話をそらした。
『彼女も以前は、バレーやってて…』なんてなんて言われたら、これまでの努力が台無しだ。
『以前は …』か…
私は自分で自分の言葉を噛みしめていた。