生贄

□そのすべては杞憂なのだけど
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階段を一段降りる度に旋毛の辺りに乗っかったお団子が小さく揺れる。気になって触ってみたらやっぱりそこにはひんやりと冷たい感触があって何だか嬉しくなった。
カンカンと響く足音が何時もより楽しげに聞こえたのは何でだろう。

銀ちゃんに髪を結われるのは初めてだったから、最初は少しびっくりした。新八には何度かやって貰ったことがあるけど、銀ちゃんは初めてでなんだか落ち着かなかった。
大きな手のひらが頭を撫でる。後れ毛を拾う度に耳や首筋に触れる。うん、やっぱり気持ち良いかもしれない。定春もいつもこんな気持ちなのかな。
ちょっとくすぐったかったけど、私はすぐに眠くなった。
「神楽?」
ああ、銀ちゃんが呼んでる。返事をしなきゃ。
だけど声を聞いたらもっと眠くなっちゃったよ。
…溜め息、かな?どうしたんだろう、怒っちゃった?いやだよ銀ちゃん怒らないで。
「銀ちゃん…」
「あ?起きてたのか?」
驚いてちょっと見開いて見えた、いつもは瞼に隠れてる白目が赤く見えた。夕日のせいだろうか。その目はすぐに細められてよく分からなかった。
「鏡見て来いよ」
「え、もう出来たアルカ?」
「ばっかオメー銀さんの器用さなめんなよ」
「何でこんな所で丸めたネ。ふざけてるアルカ?」
「そう言うなって。何時もの数倍は可愛いから」
「いつも」
「へえへえ」

背中を押されて移動する間に、顔に集まった熱は何とか散ってくれた。
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