StoryX

□Most belated
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とても今更だったと、クロウリーは思った。






城に届いていたのは一通の招待状であった。消印は聞いたこともない都市だが、国名はJapanとなっている。
不審な手紙ではあったが、前が何時であったか記憶に無い程久々なそれをクロウリーはどうしても受け流しは出来なかった。
日本か、と訳も無く口に出してから簡単に留められただけの封を開いた。
拙く解りにくい英語で書かれたその手紙は短い。最後に添えられているのもやはり見覚えが無い名、しかもファミリーネームなのかファーストネームなのかすら判らない。ひょっとすれば、偽名なのだろうか。
手紙の内容を要約すれば、年に二度だけ開催される大変大規模な祭へ参加して欲しい、と書いてある。
長らく忘れていた高揚感、クロウリーはシャツから覗く胸を押さえた。
―――私に?まさか。でも。そんな…。
もう一度、宛名を見直す。Arystar Krory、確かに青年の名だ。
どくん、心臓がこれまでには知り得なかった感情を叫ぶ。
―――日時は…。
クロウリーは震える手で、揺れる瞳でしがみつくようにアルファベットを追い。

そして、手紙を握り潰した。



いつから動かなくなっていたのか、柱に掛かった時計の振り子にふと目が行った。
疾うの昔に過ぎた時を留めた、それ。
ガラスを開き埃塗れの機械に手をやる。そっと揺らせば緩慢にカチ、カチ、と音を成した。
二三度鳴ってはすぐ停まるそれを、嬰児の一人遊びのように何度も何度も繰り返す。
――カチ カチ
―――カチ カチ
もし、とクロウリーは思う。
――カチ カチ
もし私が外国に住んでいなければ。
―――カチ カチ
もし私が疎まれていなければ。
――カチ カチ
それでも手紙は遅れていただろうか。いや、届いていたかもしれない。しかし私はどちらにせよ行ってはいけないだろう。ならば関係ない。むしろ知らなければ良かったのに。むしろ…否――――
カチ、一際大きな音で時が刻まれれば、ぼろりと目の端から水滴が墜落した。


《Most belated》


とても今更だったと、クロウリーは思った。

fin


後書き

皆様冬コミお疲れ様でしたー(テメェお前コノヤローレポで羨ましくなったからってこんな後味の悪いもん書きやがってふざけんなコノヤローいてこましたるぞワレぼけェええぇぇぇえぇええぇぇえ!!!!!!!!!!!;)
いやークロたんが居るってすげェなぁとーきょー……。
ええ、時間も話も無視でパラレル的ですがなにかwww


write2008/1/6
up2008/1/7

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