StoryX

□たとえば世界が終わるとき
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「俺とあいつらとどっちが大事なの」

ぶすっとした表情で、目の前の彼が言った。


《たとえば世界が終わるとき》


「…いきなり何を」
クロウリーはくるくるとミルクが馴染んでいくお茶から視線を上げ、きょとんとして瞬きを繰り返した。
先程まで目の前で料理を頬張っていた青年は、空になった皿を脇に退けながら頬を膨らませる。
「最近飯食うしかしてねェじゃん」
「……嫌であるか」
「うん」
俺だってアレイスターといちゃいちゃしたいし、と青年の指がクロウリーの頬に伸びる。手袋の上からでも長いと分かるそれは、するりと相手の口唇を弄り震わせた。
「ティ、キ」
顔を赤らめたクロウリー。
二人の間が近付く。
ティキは薄く微笑む。
そしてゆっくりとクロウリーの顎を上げれば――その横からさっと手が伸び、新しい皿が運ばれて来た。
「とっとと食べな」
大柄の婦人は吐き捨てるように言ってごった返す店の奥に入っていく。
湯気の立つ大皿を見て、ティキはがっくりとテーブルにへたり込んだ。
「………アレイスター」
「お、美味しそうであるよ?」
狭いテーブルに騒がしい人々。
人目を避けるために入った安食堂はいかにも二人に似つかわしいとは言い難い。クロウリーはちらっと入口を見ると、もう一度青年を宥める。
「明日にはまた教団である、ティキ」
出来るだけ長くこうしていたいのはクロウリーも同じではあったが、そういう訳にもいかなかった。
互いに理解している理由に言及がなされることはない。ただティキはもう一度溜息を着いた。
そして、脱力した表情でスプーンを取るとやけくそ気味に皿を抱え込む。
「ティキ」
苦笑しつつも、クロウリー青年を見る目は楽しそうだ。
まだまだ運ばれてくる料理を互いに口にしつつ、刻々と時間は過ぎていった。


カチャ。
空の皿にフォークが置かれ、先に食べ終わっていたティキは満足気なクロウリーを見てふっと笑った。
頬に着いたパイの欠片はナプキンに拭われ、渇いた喉は紅茶によって潤される。
店の中には既に三組ほどの客しかない。女主人も二人が作った洗いものの山を片付けているらしく姿が見えない。
ティキは半分ほど空になったワインをクロウリーにも注ぐ。なぁ、ダンナ、とその口に弧がついた。
「…何であるか」
「ここ、泊まれるらしいぜ」
二階建ての一階で、二人は会話を続ける。
事前に確認をとっていたティキに、クロウリーは苦笑しつつそれで、と促した。
「朝早い?」
「九時の汽車で出る予定である」
「お供は?」
「事後調査中」
「俺のコト、好き?」
クロウリーが、ゆっくりと溜息を着いた。
「負けた、良いであるよ」
止まったままだった手を動かしグラスを持ち上げながら言えばやったねとティキが小さく歓声を上げた。それを見てクロウリーは苦笑し、ワインを飲み下す。
「私はティキも皆も大事である」
「俺はアレイスターが一番大事」
グラスを置いて立ち上がれば、ティキがエスコートします、と手を差し出す。
クロウリーは赤面しながらその手を取った。
「どの位かというと、いつも一緒に居たいくらいにね」
「いつも?」
「そ。例えば…」
「…」
たとえば世界が終わるときも。
そう言いながら、ティキの口唇がクロウリーのそれに口づけた。

fin


後書き

皆様お忘れでしょうな…すみませぬ…
フリリク企画ラスト!
瑠璃様で「甘えたさんティキ×保父なクロ」でした………⊂・∀・;⊃

ど っ こ も 沿 っ て な い YO !!!!!111

すみませ…!遅い上に…!

てっきー(ティキ)は甘えたですよねぇ。


write2007/10/18
up2007/10/18

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