StoryX

□≡ケモノのカワをカブっても≡
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「ラビ」
教団内を久しぶりにゆっくり歩いていると、後ろから聞き馴染んだ声がした。
振り向かなくても誰か分かる、でも当然振り向いて。
「おっはよーさ!」
俺はクロちゃんに駆け寄った。
「もう昼であるよ」
あんまりに可愛くて笑われても嫌な気はしない。けれど何となく感じる違和感。
何さ?
何が違うんさ…?
そして、ピンと来た。
クロちゃんのマントが、凝ったデザインのものに変わっている!




「――ハロウィン?」
「そうである」
クロちゃんの部屋へと移動して、俺はその理由を知った。
そっか、もうそんな季節さ。と最近教団内が落ち着かなかったのにも納得する。
うっかりしてた、と笑えば、クロちゃんがラビの衣装を預かってあるである、と鞄を一つ取り出す。
大きさの割にそれは軽かった。クロちゃんの衣装を出したからだろうか。
開けてみれば、出て来たのは茶色の塊。
「狼男、だそうであるよ!」
「へえ」
ひろげると、シャツに耳付きフードパーカーとズボンにわかれる。安易な恰好な気もしたけど、オレ好みのデザインで、全くダサくなかった。寧ろ、一種奇抜な程凝っていてカッコイイ。
「試着して感想が欲しいそうなので、着てみては?」
と言われて、マジで?と思わず歓声をあげていた。



「どう?」
「似合うである!」
クロちゃんはオレを見てキラキラと目を輝かせた。
サイズはピッタリ。動きやすくて、これならハロウィンも存分に楽しめる。
オレはベッドに座っていたクロちゃんの横にかけ、ぴょこんとフードから立っている耳をクロちゃんに寄せる。
「ラ、ラビ?」
「触ってみるさ」
ふにゃん、とした柔らかいファーは本物の様で、きっとクロちゃんが気に入るはずだと思ったのだ。
オレ自身は腰にあるアクセサリー風の尻尾を触りながら、もう一回クロちゃんにすりつく。
恐る恐る伸ばされた手も、耳に触れ、ふっと力を抜いた。
「あ…柔らかいである」
「だろ?」
楽しそうに耳を触っているクロちゃん、まるで子供みたいさ。
オレは、クスクスと笑ってしまう。
「そんな顔してると、狼男に襲われるさー?」
思わずからかうと、クロちゃんがそうであるか?と笑った。
…珍しく、強気に。
もう一度、言ってみる。
「襲われる、さ…」
「そんな事は無いである」
アレ…?
「あ、あるって」
「ない」
……恐々とどうしてさ、なんて聞けば、クロちゃんはマントを脱ぎながら笑った。
「私は、『夢魔』だそうである」
マントの下は、クロちゃんとは思えないほど艶かしい服、だった。
見た感じ布と言っても良い程の表面積しかなくて。ぴっちりとした服は、クロちゃんの細い体の線をはっきりと浮かび上がらせていて。
勿論、アレした下半身も――――


 
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