StoryX

□こでまりの花
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疲れてないかい?

優しい手が彼の独特な髪型をした前髪に触れました。よれた白衣から伸びたペンだこの見える手は、そっと慈しむように彼の頭を撫でます。
彼は子供ではないのだから、と苦笑しつつも、その優しい仕草を咎めようとはしませんでした。

さいきんは、また、いそがしいからね。

そうであるな。

きのうも、かえってきたの、よなかだったし。

しかたない…それですくわれるひとがいるのなら。

ふう、と浅い溜息が漏れるのを聞き、今度は彼がそっと手を遣りました。白い頬に手袋が触れます。勿論、彼の手袋の白さに肌の白さが及ぶはずもありませんが、それでも十分に、少しこけた頬は青白いのでした。

ねぇ、くろうりー

なんであるか?

互いに頭を取ったまま、伏し目がちに視線を交わします。ゆっくり、絡めるように。

…あいしてるよ

彼の顔にさっと朱が注しました。
殆ど変わらない背では、逃れることも出来ません。
ちょっとしか変わらないのに。
と彼は一瞬無意識に考えましたが、そんなことはすぐに忘れました。
触れた頬を離して、髪を撫で続ける手に重ねます。

こむい、

楽しげに、いたずらに。愉快そうな色を帯びた目が、彼を改めて捉えました。

…私も愛しているである。

かっと、今度は紅が注しました。
彼は恥ずかしそうに目を閉じてしまいます。
いきなりの、初めての事に、髪を撫でていた手は止まっています。撫でていた本人は、目を閉じた彼を見て、心の片隅で今の顔が見られていなくて良かったと感じ入ってました。
二人とも顔は真っ赤っか。
もはや比べようにも、手袋の白と比較する訳にはいきません。
今比べるならそう、例えば林檎の赤、が妥当でしょうか。

………

………

目を閉じていることも、段々恥ずかしくなってきました。
彼は、後みっつ数えたら勇気を持って目を開こうと思いました。
三…。
二……。
い…

くろちゃん

チュッ。
一。

………。

口唇の上を何かが滑った、と彼は感じました。
何かが、の何か、は、今開けた目から見える目の前にある目、いえ鼻、そんな訳はありません、やはり口唇なのでしょう。

……あ、え…え?

ニッコリと赤い顔が笑いました。うろたえていた彼は、ぱちぱちと二回瞬きをしてから恥ずかしそうに笑い返します。
そうして、彼は伸ばされた手に手を重ねて、互いに肩を寄せ合って笑いました。




《こでまりの花》

fin


後書き

こでまり
花言葉…伸びゆく姿・努力する・優雅・品位・友情



あっれ何でだろう……花言葉関係するような話にするつもりだったのになー。何でだろうなー。只のバカップルだなー。

…V○| ̄|_

ま、まぁこれはこれで!(笑)

ところで初めて題名を最後に入れてみました。前々からやってみたかったんだー★うーん変わらない★(笑)
こでまりの花は白くてかわいーですよ。くふ。


write2007/9/4
up2007/9/9

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