StoryX

□温もりなど無いに等しくて
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この人は本当に私以外は知らない。

すまない、と大丈夫か、を繰り返しうざったくなるほど聞かれた。
私は胸を手繰り寄せたシーツで隠しながら、平気ですわ、と彼の肩にも凭れかかる。
火照りもしない体は、彼の体の熱に少し軋む。
吐き出されたあれが、私の太腿を流れていく。
彼は暫く手を空中で踊らせて、それからやっと私に添えた。
大丈夫であるか、何て良く言ったもので、彼は後始末さえ知らないのか、ただそこに座り恐縮して私を見ている。
私はニッコリ笑って彼の手に手を重ねた。
冷たい手。
私達のように温度の薄い手。
けれど彼はやはり生きていて、行為の途中は燃えるように熱い肌をして。
いくら演じても、一向に熱くは慣れない私の肌とは違っていた。
アレイスター様、私、如何でした?
ちょっとした戯れ言に彼は顔を赤くする。腹立たしいような微笑ましいような、浮かぶ殺意、何故なのか分からない。
何も知らない癖に。
何も知らないのね。
この世の何処にも正しい居場所の無い私と寝て、それでどれくらい幸せ?
熱くもならない。
生殖も出来ない。
過去に消して来た男達は、ことごとく苦笑いした私のカラダ。
どうして気付かないの、何て彼には愚問。
可哀相ね、私しか知らないなんて。
貴方の肌はあんなに熱く、あんなに優しく私に触れたのに、私は一定の温度をプログラムに沿って守ったまま。
私は剥き出しの胸板に顔を埋め、その鼓動に耳を傾けた。

きっと、彼は私しか知らずに死んでいく。
(当たり前ね、だって彼を殺すのは私。)
私の冷たい体しか知らずに、私の演じられた姿しか知らずに。
せめてあの声が、演技だとは思わずに逝けば。
貴方だけは、あれが私の本当の快感だと思ったままで。

fin


後書き

やっちゃった。(いろんな意味で)
久しぶりにクロエリですねー。
やっちゃった二人でも良いと思います。
勿論プラトニックでも良いと思います。


write2007/9/19
up2007/9/19

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