plan
□シューティングスター
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「すっかり遅くなってしまったな」
ようやく闇に包まれようとしている空を見上げ、環は後ろを振り返った。時刻はもう8時を過ぎようとしている。もちろん辺りに人の気配など数えるほどしかなく、いつもは声が響き渡って賑やかなホスト部部室も今はしん、と静まり返っていた。
「殿、僕らもう帰るね」
静寂を打ち破ったのは常陸院の弟の方で、「嫌だ」と帰宅を渋った兄、光をまあまあ、となだめながら扉の向こうへ去っていった。それを合図に、残りの部員達はそれぞれ帰り支度を始める。
「じゃあな鏡夜」
最後の一人、鏡夜を見送って、もう一度窓の外を眺めながら環は一人溜め息をついた。正確には部屋にはもう一人いたのだが2人きりになった今、どんな顔をすればよいのか分からなかったのだ。空はもうすっかり闇に包まれていて、数多もの星が煌めいている。もう一度小さく溜め息を落とした後、環は意を決して後ろを振り返ろうとした。というのは、振り返る直前に腕を掴まれ、無理やり視線を空へと返されたのである。そして隣に感じた温かい人の気配。もう確認しなくても、名前を呼ばなくてもその人が誰だかは分かっていて。
「まだ帰らないで下さい」
少しだけ震えていた声に環は苦笑し、愛しい彼女の手をぎゅっと握った。
「…家に冷房がないからか?独りで涼むのは寂しくて。」
からかい混じりにそう言うと、ハルヒは怒ったように違います!と叫んだ。こみ上げる笑いは止まる術(すべ)を知らず。
分かってる、と小さく笑い、環は静かにハルヒの肩を抱いた。少し熱を帯びた初夏の風が、駆け足で2人の間を吹き抜けて行った。
(いつか来る流れ星を君と見たいんだ。それだけだよ。)
(もしも三回、願いを唱えられたとしたら自分は、先輩の傍にずっと居ようと賭けるのです)
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