D.Gray-man

□LOVE・ing
1ページ/1ページ

どこまでも続きそうな長い廊下に彼女はいた。周りの闇に溶け込んでしまいそうなくらいの黒髪を揺らし、目的の場所まで走っていた。

「リナリー?」

ふと声がした方向を振り返ると、明るい笑顔を浮かべた赤い髪の青年がこちらに近づいてくる。

「ラビ!」

ラビはリナリーの正面まで来ると、その箱は何さ?と聞いた。今日が何の日かきちんと分かっていて、これをあげる人物も全て知っているくせに、そんな質問をするのは意地悪よとリナリーは思ったが、敢えて何も言わなかった。

「ユウに?」

「ええ」

ユウは幸せ者さー!とにっこり笑って告げる彼に、リナリーはそうかしら、といった。

「最近、神田ったら冷たいの」


もしかしたら、受け取ってくれないかもしれない。要らないといって突き返されるかもしれない。恐いの。とても。


「でもさ、」

ラビは再びにっこり笑った。

「ユウってああ見えて意外と優しいって、一番知ってるのはリナリーだと思うけど」

「でも…、」

リナリーが顔をうつむけたそのとき、

「リナリー?」

聞き覚えのある愛しい人の声。振り返ると神田がこちらに走ってきていた。

頑張るさ。そう言ってそそくさと立ち去るラビにちっ、と舌打ちをした彼は、赤毛の青年と同じ様にリナリーの正面に立ち止まった。

「あの…ね?」

話を切り出したのはリナリーの方で。

これあげると言い終わらないうちに、手の中に箱が無い事実に気づいた。

きょとんとして顔を上げると、たかだかに持ち上げられた綺麗な藍色の立方体と、そうそうにそれを破る黒髪の彼が。

「あっ…!」

リナリーが取り返そうと手を伸ばしても、もうその姿はなくて、中に入っているチョコレートは神田の口に吸い込まれていった。

「…うまい」

普段見せないとびきりの笑顔を見せた彼に、リナリーは安堵の溜め息をついた。

「俺がさ、お前からのチョコを受け取らない訳がねぇ」

ぼそりと呟いたその台詞に、リナリーは全てを悟った。この人はさっきの会話を全部聞いていたのだ。

「嫌いだったらとっくに別れてんだろが。」

それもそうだ。神田はそういう性格なのだ。そしてそれを一番知っているのは、幼少の頃から一緒に居たリナリーだけなのだ。

神田はもう一度、うまいと呟きながら、リナリーをそっと抱きしめた。







LOVE・ing/font>

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ