FATE

□C
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辺りは既に薄暗くなっている。
「僕はまだ仕事があるから先に帰ってご飯作っといてくれる?」と言われたので、素直に従って行動している私。
何作ろうかな?そんな事を考えている私の耳に、男子生徒の弱々しい声が入ってきた。


「…いや、だから俺…お金とか、全然持って、なくて…」


そっちを見ると、小柄の男の子が数人の不良に囲まれて…何て言うんだっけ、これ。
あ、カツアゲ…だったっけ。
とにかく、なんかすごい場面に出くわしてしまったみたいだ。


「あ?ふざけてんのかよテメー、金位あんだろ?」

「ひいぃぃぃ!!」


襟元を掴まれ、今にも殴られそうな雰囲気の少年。
これは、かなりマズイかも…
生憎、周りに人は居ない。
男の腕が振り上げられた時、私は飛び出していた。


「あなた達、こんなことして恥ずかしくないんですか!?」


視線が一気に集中する。
少年も、ぽかんとした顔で私を見ていた。
ここまで来たら、引き下がれない。


「お金なら、自分のを使えば良いでしょう?」


途端、男がにやけ始める。
「俺ら、マジ金ねーんだわ」とか言いながら。


「でもさ、君が一緒に来てくれるなら良いかな?」


ぐい、と手を引っ張られた瞬間、あの悪夢がフラッシュバックした。
「や、」なんなの、
嫌がっても男はますます笑うだけ。
助けに入った意味、ないじゃん…私、もしかして絡まれやすい体質なのかも……
そんな事実に愕然としながらも、必死に抵抗する。


「ハハ、必死に抵抗しちゃってかわい〜」


あなた達に、可愛いなんて言われても全然嬉しくない!!
うっすらと涙が滲む。
その時、私を掴んでいた男の手を別の手が掴んだ。


「センパイ、嫌がってる女の子にそれはナシでしょ。」


後ろに居た少年が「山本ぉ!!」と叫んでいる。
この人、山本さんって言うんだ。
少年の友達、かな?
当然のように、山本さんに突っ掛かる男達。


「テメェ、さっさとそこどかねぇと痛い目見るぜ?」


それを受けて山本さんがにこっ、と笑う。
ただ…その笑みには、とてつもなく黒い感情が渦巻いていた。


「センパイこそ、その手離さないと痛い目見ますよ?」


私を掴んでいた男の顔が苦痛に歪み始めた。
どうやら、山本さんが手に力を込めたらしい。


「っ、」

「手、離したらどうッスか」


「くそっ、」そう言いながら男達は逃げて行った。
それから今度は混じり気のない顔で山本さんが私に笑いかける。


「大丈夫だったか、アンタ。」


屈託のない笑顔。
「はい、」頷くと「そっか」と呟いてまた山本さんが笑った。


「…私、助けるつもりが逆に助けられてしまって…情けないです」

「そんなことないって。俺、あのままじゃ間違いなく殴られてたし…感謝してるよ」


それでも私は何か申し訳なくって、もう一度謝った。
すると、「女は男に守られてていいんじゃねーの?」と山本さんが言う。
この人、さっぱりしてて良い人だなぁ、と思った。


「てか、その制服並中だよな?おんなじ学校なんだな。」


その言葉を聞いて、ふと疑問に思った。
山本さんが着ているのはブレザー。ってアレ?


「並中の男子は学ランじゃないんですか?」


恭弥さんの姿を思い出して尋ねる。
すると、私だけじゃなく少年と山本さんも驚いていた。


「学ランは風紀委員だけだよ?
もしかして、君、転校生?」
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