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□す
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季節は夏。
天気は快晴。
…でも、私の心は相変わらずもやもやしたままだった(なんて、詩人みたいなことを言ってみる)。
「私の馬鹿ぁ…」
なんで、あの時聞かなかったんだろ。なかなか会える訳ないのに。
『怪我、ないの』
「…っ!!」
あの人を、描きたい。
でも、あの日から…あの言葉を聞いた日から、それだけじゃなくなってる気がする。
なんで、彼は、血も涙もない人なんじゃなかったの?あまりにも噂と掛け離れた彼の言動に動揺していた。あれじゃまるで、私のこと…
「心配してくれた、みたいじゃない…」
それならそれで嬉しいけど。
…って、嬉しいのか、私。
や、だって殺意抱かれるよりは良いに決まってるよね、うん…
空を眺めながらぼんやり考える。え、ああ、私、今絶賛サボり中でして。屋上でこうやって寝転んでうとうとしてる次第でございます。
天気も良いし、絶好の昼寝日和だなぁ…と、昼寝することを頭の中で決定した私の耳に飛び込んできた声。
「咬み殺す。」
「!!」
慌ててフェンスから下を覗き見て、頬が緩んだ。
彼、だ。
「ひばりさん、だぁ…」
彼の足元にはたった今“咬み殺された”男子生徒が倒れていたけど、私の目には入っていないに等しい。
彼の周りに舞う紅い血が、なんとも言えなかった。やっぱり何回見ても、
「綺麗、だなぁ…」
と、不用意に私が呟いた瞬間、背を向けていた彼が静止し、私の方を見上げて口角を吊り上げた。
え、何…?
「違反者、発見。」
「は…?」
そうして彼は校舎内に消える。ちょ、え、何が…って、
しまったぁぁぁあ!
私、今サボってるんだった!
ど、どうしよ…私も咬み殺されるんじゃっ…
何もせずに立ち尽くしていると、屋上の扉が開いた。
「やぁ。」
「はは…」
来るの早過ぎ…
再会がこんな形で実現するって…嬉しく、ないかも…
「覚悟は良いかい?」
「…ええと、」
明らかにじりじりと照り付ける太陽のせいではない汗が流れる。
どんどん近付いてくる彼に、思わず後ずさってフェンスに体重を預け、た、つもりだった。
フェンスが、ない。
そう思った時にはもう遅かった。私の体は重力に逆らわずにゆっくり倒れ始める。
最後に見えたのは、こっちに手を伸ばすひばりさんと、青い空だけだった。