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□美
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「委員長、本日の欠席者、遅刻者リストです」
「…戻っていいよ」
「ハッ、失礼しました」
遅刻者が三人。いつも通り、後で咬み殺しておかなきゃね。そう思いながら視線を下ろしていると、ある一点でそれは止まることになった。
「…秦夕那、欠席」
なんだ、つまらない。
折角からかおうと思ってたのに。…そう、ただそれだけ。なのに、このもやもやした感情はなんだろう?会えば、分かるかな。思い立った瞬間、僕は草壁に電話をかけていた。
「暫く学校離れるからよろしくね」
全く、君は余計な手間をかけさせてくれる。
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「あ゛う…」
人生初の、ズル休みをしてしまった…!うわぁ、ばれたら絶対ひばりさんに咬み殺されるよ…
そう思っていても、何故か全く学校に行く気にはなれなかった。何故か、ってひばりさんのせいに決まってるんだけど…思い出して、また顔が熱くなる。なんであんな事、したんだろう。というか私アレが初めて、で。ファーストキスは泣く子も黙る風紀委員長でした、ってなにそれ笑えない。
「ひばりさんの唇、…」
柔らかかった。
…変態か、私。いやでも、考えずにはいられない。ぷに、と自分の唇に触れてそしてまた枕に顔を埋め、奇声を発する。幸い両親は仕事で居ない。でも流石に明日は学校行かないと、だよね。うわぁひばりさんにどんな顔して会えば良いんだろ…ううう。嫌ではなかったんだけど、あれ、嫌じゃなかったのかな…前にもこんなこと考えてたような気がするんだけど。
「邪魔するよ」
「はいはいどうぞー」
「…」
ひばりさんに会いたいけど会いたくない。みたい、な。ドサドサ、と何かが置かれる音がして…ん?
「…っ!ひ、ひひひばひばば」
「…落ち着いたら?」
いつの間に、と辛うじて呟くと君返事してたじゃない、と言われた。この、無意識このやろう!というか何でひばりさんが画材を持って家に来るんですか。
「毎日描くんだよね?休みでも例外は許さないよ」
「嘘っ…」
「本当。さっさと準備して」
ひばりさんに急かされてとりあえずのろのろ準備を始める。あ、お茶出さないと。ひばりさん、全然普通だったし、私が意識し過ぎただけなのかなぁ…それとも、やっぱりひばりさんは初めてじゃなくて、ひばりさんにとっては特に意味がないことなのかな…そう思って、胸の辺りがきゅう、って締め付けられるみたいになった。
「ねぇ、そっちは階段…」
「へ?あ、」
「っ馬鹿!」
がくん、ひばりさんの忠告を理解する前に私は階段を踏み外していた。うわ、なんか最近、私落ち過ぎな気がするんですけど。案の定、私が落ちる寸前で彼に掴まれた、手。
「限度ってものがあるでしょ」
「すいませ、ん」
返事しておきながらも、やはり私はひばりさんの顔を見ることは出来なかった。