series

□術
1ページ/3ページ






「…秦、」


「んー…」


「んー、じゃないでしょ」



五月蝿いなぁ、人が折角気持ち良く寝て…ってひばりさんんん!?えと、なんでなんでこんな…あ。



「わ、私もしかして」


「…ぐっすり寝てたね、おはよう」



窓の外を見れば既に真っ暗。
ひばりさんは私が起きるのを待ってくれていたみたいで、胸に少し罪悪感。



「じゃあ、僕帰るから。体調管理しっかりしなよ」


「あ、はい…あの、ひばりさん」



泊まっていきませんか。
気がつけば自然とその言葉が出ていた。…いやいやいや非常識にも程があるだろ。そう心の中で思ったけれど、口から出てきたのは全く正反対のことで。



「うちの親…、あんまり帰って来ないんですよね。それで、」


「君は親がいない家に男を泊めることの意味を分かってるのかい」


「…すいません」



一言で言えば、私は淋しかったのだ。やっぱ、無理だよなぁ。顔を伏せると、頭上から溜息が聞こえた。



「…わかったよ」


「え…?」


「泊まっていくことはできないけど、明日の朝迎えに来てあげる。だから、そんな泣きそうな顔しないでくれる」


「…はい」



そう言うとひばりさんはおやすみ、と私の頭を撫でて窓から華麗に飛び降りて帰ってしまった。泊まっては、くれないんですねやっぱ。ふぅ、と息を吐くと携帯が着信を知らせている。誰だろうと思って携帯を開くと、



「え…ひばり、さん?」



ディスプレイには雲雀恭弥の文字。いつの間に登録されたのだろう…と思いつつもとりあえず通話ボタンを押す。



「もしもし」


『…君が寝てる間に登録させてもらったから。何か用がある時は呼びなよ。あと、』



淋しくなった時もね、とひばりさんが余りにも優しく話すものだから、胸がどきどきした。きっと私の顔は真っ赤。



『おやすみ』


「おやすみなさい…」



…なんだろう。
少し前まで淋しくて仕方なかったのに、今では胸がふんわり暖かい。ひばりさん、貴方はやっぱり私にとって憧れの人。



「…ふふ」



自分でも気持ちの悪い笑みを浮かべ、簡単に寝る準備をして布団に入る。なんだか今幸せかも。ひばりさんのお陰で今晩は良く眠れそうです。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ