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□部
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グラウンドから部活動中の生徒の声が微かに聞こえる。
そして僕は、...これで何度目になるだろうか、応接室にある壁掛け時計を見て小さく溜め息をついた。




「...遅い」




今日も応接室に来るよう言っておいた筈なんだけど。いつも僕より前に準備して待っている彼女にしては珍しい。だからこそこんなに苛々する、...ということにしておこう。それにしても、本当にどうしたのだろう。名簿を確認したけど欠席ではなかったようだし。

そこまで考えて、僕は漸く携帯の存在に気付いた。




「...携帯、」




僕から電話するつもりなんてなかった。でもこれだけ僕を待たせたんだ、呼び出す権利くらいは...




「......馬鹿らしい」




呼び出す権利?
今まで普通に校内放送で生徒を呼び出していたくせに、何を躊躇してるんだ、僕は。ああもうだから嫌なんだよ、ひとつ行動しようとする度に彼女を意識させられる。彼女のことに関してだけ弱気になる自分を認識させられる。それはつまり、僕が、彼女のことを、




「...」




...思考があらぬ方向へ飛んでいってしまうのも彼女のことを考えている時のオプションだったりする。というかさっさと電話しろよ、自分。容赦なく時間を刻む時計に目をやり、僕は漸く発信ボタンを押した。



...
......



...お掛けになった電話は、現在電波の届かない所にあるか、電源が切られているため、...




「...ああもう、」




ふざけるな。
音を立てて立ち上がり、早足で応接室を出る。向かう先は生徒用下駄箱の1203、下靴が入っていれば美術室だ。そう思い、僕は学ランを羽織って応接室を出た。
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