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□恋愛論
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好きになる、とはなんなのだろう。

ぼんやりと青空を見上げながら思う。
今まで何度か思ってきたそれを、大して真剣に思考しようとせず目を閉じる。誰か、上手い具合に私を納得させてくれないか。


ある人は、好きになるとは許すことだと言った。自分が、相手の行為に対してどれだけ寛容でいられるか。キスという、聞こえはいいが実際のところただ粘膜と粘膜を重ね合わせ互いの細菌を交換するだけのなんとも不衛生極まりない行為を、どれだけ受け入れられるか。そういうものだと言う。

ある人は、好きになるとは相手を想う時間が長くなることなのだと言った。相手が自分の隣に存在しない間、どれだけ相手のことを考えているか。そういった意味では、独占欲に近いかもしれない。

ある人は、好きになるとは錯覚に過ぎないと言った。遺伝子的に、子孫を残そうとするため組み込まれた、より優秀なパートナーを見極める選別過程なのだと。私たちは無意識のうちにより相性のいい相手を求めているらしい。運命と言えばロマンティックだが、実際はなんと滑稽なことだろう。

ある人は、好きになるとは人によって定義の仕方が異なるものだと言った。相手の容姿の良さが好きに直結する人もいれば、相手の考え方に共感して好きになる人もいる。短期間に何人も好きになる人もいれば、長い時間が必要な人もいる。しかしそれは、好きになるとは何か、という私の疑問には全く答えていない。





「何してるの、こんな所で」





その声にそっと瞼を上げれば、若緑色の瞳と目が合った。別に、と答えれば彼は何も言わず私が寝ころんでいる隣に腰掛けた。



「総司はさ、」

「ん?」

「好きになる、ってどういうことだと思う?」



考えていたことをそのまま口に出してみる。どうしたの急に、と苦笑しながら、総司は私と同じように横になった。



「...そうだなぁ、例えば」



ぐ、と伸びをして答えを待つ。



「例えば、君と僕が此処に居るじゃない?君と居ることで僕は今すごく安心してるし、心地いいな、って感じてる。いつまでも一緒に居たいな、って。こういう時に、僕は君が好きだ、っていうんじゃないかな」



なるほど、そういう考え方もあるのか。再び目を閉じ、考えることを止める。



「でもさ、それなら」

「?」

「総司は私のこと好きだし、私は総司のこと好きってことになるね」

「そうなんじゃない?」

「そっか、そういうもんなのかー」

「うん、そういうものだよ、きっと」





恋愛論
2012.03.09

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