―2032年―ペルー・マチュピチュ遺跡―

「・・・これが死なのか。」

・・・気がつくと、空が遥か遠くでただの光の点となって見える。

鳥や虫の鳴き声と共に、時折獣の雄叫びの様な声が遠くで聞こえ、暗く生暖かい温度の植物だらけな空間で瓦礫と砂埃に半身埋まった体を無理やり起こすと、右足と腰に激痛が走った。

どれ位落下したのだろうか?

いや、何故こうなったのだろうか考えるべきか。

そんな疑問を掻き消す様に、ここから脱出する事ができるのかという不安が頭を過ぎった。

「とにかく戻らなければ。」

進む度に腰に痛みが走る。

右足を引きずりながら腰を押さえ、生い茂ったつるをかき分けひたすらがむしゃらに歩いていると、前方に人らしき物が横たわっていた。

恐る恐る近づくと、それが人であり、しかも見た顔である事が判明した。

「ガイドか!?おい!しっかりしろ!」

声をかけたが返事はおろか、息すらしていない。

そしてその女の顔を確認した瞬間、ここへ落下した簡単な理由をふと思い出した。

2日前に余った有給を使い日本からペルーへ飛んだ俺はマチュピチュ遺跡を訪れ、雇ったガイドに止められるのを振り切り、立ち入り禁止区域のフロアへ足を踏み入れた。

恐らくガイドの女は俺を追い、命を落としたのだろう。

「なんてこった・・・。」

落胆し、地面に腰を落とした瞬間、突然前方からまるで原始人の様な叫び声が聞こえた。

声の主は凄まじい速さで近づいてくる。

毛皮のフードを被り、毛皮の短いコートを羽織った浅黒い女が銃口をこちらに向けた。

その女は珍しいような物を見るような顔つきでこちらを見ていたが、コートの下に何も着込んでおらず、下着もパンツ一枚のみという野生的過ぎる風貌に一瞬圧倒され、こちらも同じ様な顔で見つめてしまった。



「何をしている?」

女が銃口を向けたまま強い口調の英語で問いかけてきたが、いきさつを話すとすぐに状況を理解してくれた。

「私はこの国のゲートキーパー。ここを通る者に教える事が私の仕事。」

近くにあると言う見張り小屋へ向かう途中、女はそんな事を急に口にした。

「この国?教えるって、何を?」

意味不明な言葉に戸惑いながらも、そのゲートキーパーに肩を貸され、苔や植物で外部が埋め尽くされた古い小屋へ着いた。

部屋に入ると、ゲートキーパーは鍵を閉め、簡易ベッドに座るよう促した。

「休ませてくれるのか。ありがたい。」

すると女は銃を床に投げ、フード付きの毛皮のコートもおもむろに投げ捨てた。

当たり前の様に黒いTバック一枚となったゲートキーパーは奥へ行くとお湯を沸かし始めた。

「・・・ん?コーヒーでも入れてくれるのか。ありがたい。」

そんな事を言ったはいいが、実際はそれどころではない。

なにせ恐ろしくスタイルのいいワイルドな姉ちゃんが初対面でいきなり素っ裸でうろうろしている事自体、ただ事ではない。

「金取られるんじゃないだろうな・・・いやそもそもそんな『店』じゃないしな。」

どうでもいいアホな考えをしていると、ゲートキーパーの女が乳を丸出しで湯気のたったコーヒーカップを持ってこちらに来た。

「これを飲んで。」

言われるがままそれを飲むと、甘く苦くまろやかで温かな、要はただのコーヒーだった。

遺跡からここまで喉がカラカラだった事も手伝って、一気に飲み干した後、カップを古い切り株で出来たテーブルに置いた。

「で、ここは何処で、何で君は服を着ていないんだ?」

そう切り出した瞬間、ゲートキーパーはそれを遮るかの様に強引にキスをし、舌を入れてきた。

そして乳房を俺の顔に押し付け、乳首を舐めてくれと言わんばかりに口元へずらした。

「ここは欲望の国アマゾネス。女だけで統治している。」

「・・・え?」

そう言うと、ゲートキーパーは俺の服を脱がせにかかった。

「私達の欲求に飲み込まれない様にする為に、一つだけ覚えておけ。」

黒いTバックを脱ぎ捨て、舌で俺の物を下から上へ軽く撫でる様に舐めながらそう言った。

「この国の女に、決して惚れてはならない。」

元気になった物を音を立ててしゃぶりながらそう言うと、慣れた手つきでそれを自分の股へ運んだ。

「守れなければ、お前は死ぬ事になる。」

そう言い終えたゲートキーパーは熱く濡れた穴に俺の物を飲み込み、悶え、吐息を漏らしながら腰を激しく前後に振り出した。



―この時の状況を話すと、大多数の人間が口を揃えて

「可愛そうに。お前は騙されたんだな。」

と話半分で聞いて流すかもしくは

「天国だな。俺も連れてってくれ。」

と、やはり話半分で聞き、適当に羨ましがって終わる。

だが実際は違かった。

この時、ゲートキーパーが激しく悶えながらまるでリオのカーニバルのダンサーの様に腰を振っていた辺りから記憶が飛んでしまっている。

途中で飲んだコーヒーらしき飲み物のせいなのか、あのゲートキーパーの仕業か今となっては分らない。

鮮明に覚えていたのは、その自由自在な腰使いと、最中にゲートキーパーが言った

「―この国の女に、決して惚れてはならない。」

と言う警告の言葉だった。

どれ位時間が経ったのかは分らないが、気がつくと既にそこは小屋の簡易ベッドではなく、廃工場の様な古臭い機械だらけの場所で床に寝そべっていた。

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