NOVEL
□ハロウィンパーティー
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昨晩は真夜中まで持ち帰った仕事をしていたヒイロは、彼にしては珍しく遅い時間に目が覚めた。
リビングからデュオの気配を感じ、ヒイロはゆっくりと起き上がる。
「…?」
しかし、こちらに背を向けて忙しなくゴソゴソしているデュオに、ヒイロは何となく声がかけられないでいた。
テーブルの上には真っ黒な生地の塊と、見るからに体に悪影響を及ぼしそうな原色のお菓子。
そしてデュオは、脇目もふらずにカボチャと格闘している。
「…何だそれは」
後ろ姿でも解る、楽しそうに鼻歌混じりでカボチャをくり抜くデュオに、ヒイロはそっと近付いて彼の手元を覗き込んだ。
「あ、おはようヒイロ」
ヒイロに気付いたデュオだったが、軽く視線だけ寄越して挨拶すると、そのカボチャが何かも答えずにまた背を向けてしまった。
――面白くない。
ヒイロは正直、そう思った。
いつものデュオなら、嫌というほど絡んで来ていたし、聞いてもいない事まで話して来るというのに。
「……」
あまり充分な睡眠をとっていない朝は特に寝起きが悪くて、ヒイロは自分自身でも解るくらい不機嫌な顔をしていながら――
ヒイロは眉を寄せると、力いっぱいデュオを背後から抱きしめた。
「…う、わ!何だよヒイロ!あっぶねー…」
ナイフを持っていたデュオは、手元が狂いそうになって慌てふためいた。
手を離したせいで、ゴロンと重い音を立てながらカボチャが床を転がってゆく。
それを追い掛けようとしたデュオを、しかしヒイロは抱きしめたまま離さなかった。
「…んだよも〜」
「何だと聞いたのは俺だ。質問に答えろ」
そうやって物騒に背後から抱きしめて命令口調で聞いてくるヒイロに、デュオは可笑しくなって肩を竦めた。
戦後、一緒に暮らすようになってからのヒイロは、驚くくらい感情をあらわにするようになったと思う。
多分それを言ったら、ヒイロは「元からだ」と憮然とした顔で言いそうだけど。
「ハロウィンの準備だよ」
「ハロウィン…?」
「そっ!」
振り返りながら楽しそうに話し出したデュオだったが、ヒイロにはそもそも――
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