NOVEL
□我輩はヒイロ・ユイであるC
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俺の名前はヒイロ・ユイ。
何度も説明するのは面倒だが、元々人間の男で今は犬だ。
そろそろ冬本番になろうという頃か。
最近とみに気温が下がっているし、吐く息も白く霞み、今にも雪が降り出しそうな天気が続いている。
…という事は、俺の任務も間もなく終了するという訳か…。
短かったようで長かったような半年間だった。
「ブシャン!」
―どうやら風邪をひいたらしい。
朝からくしゃみが止まらない。
カトルの執務室は温かいのだが、様々なデータを記録する為に、冷たいステンレス台の上に毎朝乗せられるのだから仕方ないか。
否、俺の体力が落ちたという事か?
「風邪ですか、ヒイロ」
カルテに目を通したまま呑気に聞いてくるマッド・サイエンティスト…基、カトルに頷くと、奴は驚いたように顔を上げた。
一応はこちらの様子も気にかけていたようだ。
「大丈夫ですか?風邪薬か何か…調合した方が良いかな?」
…勘弁してくれ。
これ以上、こいつの薬を飲みたくない。
止まらないくしゃみに悩まされながら台から飛び降り、まだ何やらほざいているカトルを余所に執務室を後にした。
「ヒイロ」
廊下へ出ると、デュオが今まさに執務室へ向かって来ようとしたところだった。
その手には俺の首輪とリード。
日課である甘いデート(散歩)のお誘いと見た。
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