NOVEL
□我輩はヒイロ・ユイであるD
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「…イロ、…ヒイロ、聞こえますか?」
ぼんやりとした意識の中、微かに聞こえてくるカトルの声に意識を取り戻す。
目を開けて見渡し、そこが見慣れた景色である事に安堵した。
――ここは、カトルの執務室だ。
「大丈夫ですか、ヒイロ」
「…ああ」
汗で張り付いた髪をかき上げ、カトルへ返事をした瞬間――
――我に返った。
「…」
恐る恐る掌を見ると、かつて人間であった頃のそれがある。
身体を見下ろすと、どうやら全裸であるのを隠す為らしく、タオルケットがかけてあった。
「…そうですよ、ヒイロ。君は元に戻っています」
未だ理解出来ないでいた俺に、カトルがカップを手渡しながら告げる。
それを受け取りながら、俺は茫然としつつ短い溜め息を吐いた。
…急激な身体の異変は、この為だったのか。
意識を失った俺を運ぶのは、さぞ苦労した事だろう。
――運ぶ…?
「…まさか」
再び、我に返る。
辺りを見渡した俺は、そこに居ないデュオの姿に気付いてカトルに詰め寄った。
「まさか、デュオ…が…?」
「落ち着いて下さい、ヒイロ。デュオが運んだ時、君はまだ犬でした」
バタバタと慌ただしい足音が近付いて来る事に気付いたカトルは、驚いて扉の方へ視線を移した。
ノックもせずに飛び込んで来たデュオの腕には、ぐったりとした様子の犬のヒイロ。
青ざめたデュオは息を切らせており、ただならぬ状態を物語っている。
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